ヨシトのたびかん

主に福岡。ときどき県外の美術館までの小さな旅や展覧会の感想など

COMICO ART MUSEUM YUFUIN(コミコアートミュージアム ユフイン)の予約方法とガイド制のツアー形式の内容とは?

「大分の湯布院に事前予約制で、ツアー形式の美術館がある」

 

そんな情報を以前から耳にしていたもののなかなか動けず、

奈良美智さんの作品が由布院にきたよ」という話を聞いてようやく

重い腰を上げたヨシトです。

 

昨年末の休みに大分のCOMICO ART MUSEUM YUFUIN へ行ってきました。

camy.oita.jp

 

 

ゆふいんへのアクセスは?

福岡空港から由布院駅前バスセンターまでは高速バスで2時間10分程度。

博多駅から由布院駅まで特急で2時間15分程度。

別府からだと山道を車で40分ほどで到着。こちらは展望台の狭霧台からの眺め。

ゆふいんの街を見下ろせる、車で行く方にはお勧めのスポットです。

 

由布院駅から観光地で有名な金鱗湖まではお土産さんや飲食店などが軒を連ねる湯の坪街道。何も見ずに歩くだけなら20分。寄り道が楽しいので2時間くらいは欲しいところです。

 

COMICO ART MUSEUM YUFUINはどこにある?

気になるCOMICO ART MUSEUM YUFUIN(コミコアートミュージアム ユフイン)の場所は湯の坪街道から一本入った通りにあります。

 

こちらは湯の坪街道に面した公園の方から見たCOMICO ART MUSEUM YUFUIN 

 (奥の黒い建物)

公園をはさむとにぎやかな空気が一変。静かな民家と川べりの近くの場所へ。

美術館がこんなに街中にあるとは思わず、山側かと思って来てみれば

平地にあり二重に驚きました。

 

黒い外壁材は焼杉で、由布院の雰囲気に溶け込んでいます。

美術館のロゴはデザイナーの原研哉

無印良品アートディレクションを務める方だそう)。

 

気になる展示内容は? 

展示は1階に村上隆杉本博司の展示室が1つずつ。

2階に奈良美智の作品。建築は隈研吾。有名どころの名前が並びます。

 

予約方法は?

まず、この美術館は予約が必要で事前に公式サイトでオンライン予約をします。

今なら(2020年1月20日現在)期間限定で1500円が1200円で入場可能。

時間帯ごとに予約ができ、ガイド付きで最大20人の参加者と一緒に 1時間かけて館内を回ります。 日本語の他に韓国語のガイドの回もあります。

(前日に予約をしたら予約完了のメールが届かず、ハラハラして受付に向かったところ、無事予約できていました。早めに予約する方が良いかもしれません)

 

入場料と満足度はどんな感じ?

私も皆さんも気になるところは

・1時間1200円(通常1500円)の入場料は高いのか? 安いのか? 満足度は?

・他の参加者と回るため1時間って長いのか、短いのか?

かなと思うので1つずつ答えてみます。

 

入場料と満足度

お茶付き、立派なカタログ付き、ガイド解説付き、人数制限あり、 由布院という観光地なのでこのくらいはするのかな~という感じです。

人数制限のことを考えると採算が取れるのかちょっと心配になったりもしますが、オリンピックイヤーなので海外からのお客様も多くなって認知度が高まれば採算が見込める、のかな?

美術館の周りの建物は研修棟として使っているそうで自社以外の会社にも貸し出しているのか気になるところです。

 

解説があると自由な見方が出来なくなるという懸念もあるかと思いますが、 この作品のどこにアーティストのこだわりがあるのか聞くと、目の前の物がまた違った見え方をするのでガイド付きツアー形式の鑑賞も悪くないなと思いました。

(ずっと1200円でお願いしたい気持ちもあるけれど)。

 1時間のツアー形式って長いの短いの?

建物の中の移動や解説を聞く時間、 写真を撮る時間、休憩時間も入れて1時間でちょうど良いくらいでした。基本は立っての鑑賞のため、足の不自由な方は椅子など借りられるか受付の時に相談すると良いです。

 

それでは、いざツアーへ!

まずは1階から。

1階の村上隆の部屋を観て、いったん建物の外に出て、杉本博司の部屋に入ります。

全員がいっせいに移動するため、どちらか片方の部屋は常に誰もいない状態になり、

作品と空間を楽しむことができます。

絵の中の月が水に映るように考えて置かれているそう。

村上隆「Snow Moon Flower triptych

 

村上隆

左から「And Then x6(Red Dots:The Superflat Method)」

           「And Then x6(White:The Superflat Method,Black and Red Ears )」

           「And Then… All Things Good and Bad,All Days Fine and Rough」

 

DOB君という名前はなんとなく知っていたものの、ドブネズミが由来ではなく、

『どぼぢで、どぼぢで、おしゃまんべ』のローマ字表記の最初の3文字がDOBの意味

だそう。

遠くから見ると白一色のような背景の塗り方も近づいてじっくり見ると細かくて驚きます。

 

 杉本博司「CARIBBEAN SEA,JAMAICA

部屋の壁にぐるりと海の写真が5点。最初は写真とも海とも思えず、これは一体何なのだろうと近づいて、波かしら? ムムム? という具合。

古代の人と現代の我々が見ることのできる同じ風景はなにかという杉本の立てた設問に対する自身の回答が世界各地の「海景」。

部屋を見回すと朝から夕方までの時間の流れを世界の海景で感じることができます。

 

そしてカラーの部屋とモノトーンの部屋を後にし、2階へ。

 

2階はこんな感じ。

NHN JAPANという企業の総合エンターテーメント・プラットフォーム comico(コミコ)に関連する漫画や展示されているアーティストの本などが壁に並べられており、

手に取って読むことができます。(知ってる漫画があってびっくり!)

 

そして窓の外には山是山という枯山水と、

由布岳を背に奈良美智の「Your Dog(仮)」。

犬に名前をつける投票が行われていて、私も一筆書いてきました。採用されるかな?

 

 

室内から見る犬は一人ぼっちだけど、あまり寂しそうではありません。

淡い白と、滑らかな表面の質感と静かな微笑み。

 

犬の方に立って見ると、部屋の中の人たちと一緒に居るように見えます。

だからこの白い犬は寂しそうではないのかな。

 

庭の草木が育つにつれ建物を包む雰囲気が変わるところまで考えられているそうで、

頻繁に訪れられない観光地の美術館だからこそ、また別の機会に観光がてら寄るのも

いいのかなと思った美術館でした。

 

 【おまけ】 

金鱗湖。早朝だともっと霧が見えたかも。

画面右端にうっすら白いのが見えますでしょうか。

 

由布院駅から金鱗湖に行く間に

ジャズ羊羹を販売しているジャズとようかんの湯布院CREEKS.もあります。

服や雑貨も販売していました。

湯布院 ジャズとようかん

 

 

由布院エリアには他にも色々な美術館があるので、温泉と美術館とスイーツ巡りも

いいかもしれません。楽しい冬の旅を!

 

年明けから眼福『音と旅する鉱物展』三菱地所アルティアム

福岡市天神のイムズ8階にある三菱地所アルティアム

九州大学総合研究博物館の鉱物コレクションの展示が行われています。

artium.jp

 

展覧会のチラシによると

 

"国内でも最大級の750万点の貴重な博物標本・資料を収蔵する

九州大学総合研究博物館の中から選りすぐりの鉱物コレクション約100点を

現代アートや舞台、映像など幅広い分野で活躍する音楽家 原 摩利彦が手がけた

音とともに紹介いたします。”

 

とあります。

鉱物だけでも行く気まんまんなのに、音がある展覧会ってどんなものだろうと

大変興味が湧きまして、12月の末に行ってきました。

 

 

アルティアムの展示室は3つに分かれていて、上の写真のような導入部分と、

左手の1つ目の部屋に「TIME #1 内包された時間」「TIME #2 時間が止まった森」

奥の部屋に「SPACE」というテーマで鉱物が展示されていました。

 

 

 

2つ目の部屋では鉱物を載せた台の下にスピーカーがあるのか、

鉱物から音が流れてくるような演出がされています。

自分に鉱物の声を聴く能力があったらこんな風に音が聴こえるのかも。

 

天河石。表面がまるで波のよう。

 

模樹石。植物っぽいのに植物の化石ではないのです。フラクタル模様と呼ばれるそう。

 

お肉やお刺身に見える鉱物も。

 

お正月にぴったりの栗きんとんっぽい鉱物。

 

 

ミュージアムショップでは鉱物や鉱物にまつわる本、

こうぶつヲカシの鉱物の形をしたお菓子の販売などもありました。

 

展覧会は2020年1月26日(日)まで。

初売りやバーゲンついでに訪れるのも良いかもしれません。

不思議だな綺麗だなと思うと同時に、とても物欲が高まる展覧会でした。

 

 

 

『挑む浮世絵 国芳から芳年』福岡市博物館で「よしよし」展

国芳は好きなんだけど芳年は怖いイメージがあって、

行くのをためらっていたヨシトです。

しかし、芳年の「よしと」までは名前がかぶっているし、

ツイッターで音声ガイドがゲームやアニメでよく存じ上げている

声優の鳥海浩輔さんと知ったからには行かねばなるまい。

 

それに芳年の怖い以外の一面に出会えるかもしれないと淡い期待を胸に抱きつつ

ヨシトは一路、福岡市博物館へ向かうのだった。

 

『挑む浮世絵 国芳から芳年へ』は 

歌川国芳(1797-1861)と月岡芳年(1839-1892)がメインの浮世絵の

展覧会。国芳の元にはたくさんの弟子がおり、芳年国芳の弟子の一人。

展示の終わりの方には芳年以外の弟子の作品もあり。

見ていくと、これでもかこれでもか、と

当時の人が見たら驚いたんじゃないかという臨場感あふれる

浮世絵がたくさん並んでいました。

 

 

 

国芳の「児雷也(じらいや)と大蝦蟇(おおがま)」

児雷也の敵はNARUTOを知っている方なら答えられるであろう、

大蛇丸(おろちまる)! 真ん中だけだと地面で戦っているように見えるけれど、

3枚揃うとこういうことか! と分かって面白い。

 

 

 

途中、進んでいくとこんなお触書が。

 

怖い絵を見ない選択もできますが、ここまで来たからには見ないで帰れません。

進撃の巨人』『鬼滅の刃』『PSYCHO-PASS サイコパス』『東京喰種』『寄生獣

など血みどろシーンのある漫画やアニメなどを見てきた私ではありますが、

自分の知らない恐怖があるのでは、と思うとちょっと足がすくみます。

(2)の関所でチェックした後、

通路の先に頭だけ突っ込んで人が居ることを確認して、いざ中へ。

(これ以降、過激な表現の浮世絵の写真があります。OKの方のみスクロールして

お進みください)

 

 

月岡芳年

「英名二十八衆句(えいめいにじゅうはっしゅく) 由留木素玄(ゆるぎもとはる)」

 怖いのは見たくないけど、文字だけでなく着物や小道具まで細かく描かれていて、

ついついまじまじと見てしまう。真下から見ると着物に模様が見える仕掛けも。

手が込んでいます。

 

 

 

怖い絵のコーナーを抜けてホッと一息。

月岡芳年「皇都会席別品競 久保町売茶亭 春本いく」

こんなところに猫が。国芳の猫好きは芳年にも受け継がれていたのかな?

 

芳年のとってもセクシーな浮世絵。

「風俗参十二相 かゆさう 嘉永年間かこゐものの風ぞく」

下がり気味の眉と目と少し開いた唇が色っぽい。

 

絵草紙屋の展示も。

 

  

そして今回私の中の芳年像が変わった「一ツ家」のコーナーへ。

 

 

国芳46歳ごろの「観世音霊験(かんぜおんのれいげん)」

 

 

芳年34歳。「一魁随筆 一ツ家老婆」

 

芳年47歳。「奥州安達がはらひとつ家の図」

吊るされた妊婦が実の娘だと知らずに、

老婆があやめてしまう場面。老婆の体は細いけれども、まっすぐ妊婦を見る眼差しや

包丁を研ぐ手つきに一人で人をあやめて生き抜いてきた逞しさを感じてしまう。

芳年が老婆にこめたリアルさを感じる。

 

芳年52歳。「月百姿(つきひゃくし)孤家月(ひとつやのつき)」

老婆が火をつけようとする縄の先には石が吊るされ、その下には旅人が。

旅人の運命やいかに!見る人がハラハラドキドキ。

 

 

 

 終わりよければすべて「よし」。国芳「浮世よしづ久志」

 

怖い浮世絵もあったけど、時代に合わせて

進化をやめない国芳芳年たちの挑戦を見た展覧会でした。

音声ガイドは「よしよし」言われるので名前によしのつく方は

ぜひ借りるが「よし」です。

 

 

【おまけ】 

実はキャンペーンに惹かれて、期日までに行って感想ツイートをしてみたら……。

ありがたいことに当選しました!

福岡市博物館所蔵、旧吉川観方コレクションの国芳芳年の浮世絵のカレンダーです。表紙は国芳の「相馬の古内裏」の3枚続きのうちの2枚。

黒い背景に浮かび上がる巨大な白い骸骨。屋内に居る人間を覗き込む仕草に

これから始まる闘いの予感を感じてワクワクする浮世絵です。

今回の展覧会ではこのカレンダーに無い左端の1枚を見ることが出来ますよ。

 

 

 

 

 

 

 

入門編にちょうどいい『熊谷守一 いのちを見つめて』久留米市美術館

最近、出不精のわりによく出歩いているヨシトです。

今回は、映画『モリのいる場所』でご存知の方も多いはず、

久留米市美術館で開催中の熊谷守一展へ行ってみました。

会期は2020年の1月13日(祝日)まで。(展示室内の撮影は不可です)

 

 

美術館がある石橋文化センターの敷地の池の白鳥。

イチョウの落ち葉が絨毯のように広がっています。

 

 

熊谷守一の初期の作品から看板にあるような晩年までの作品がずらりと並ぶ展覧会に

なっていました。

作品や年表を見ると生きている時から売れっ子の画家だったことが分かります。

モリのいる場所』の題名だけ知っているような私にも優しい、

【入門編】の熊谷守一展と言えそうです。

 

守一は岐阜の生まれで、同じく岐阜出身で博多の聖福寺のお坊さんの

仙厓さんの言葉を書にしたものもありました。

 

 「ぐるりと家を取りまく貧乏神 七福神は外へ出られず」

 

仙厓というサインまで大きく書いてあるところがこの言葉を知らない人にも優しい。

検索してみると、新築祝いに家の主から何か書いてと頼まれて

仙厓が書いた言葉だそう。

貧乏神まで書いて一呼吸置き、主を慌てさせたあと、

下の句でほっとさせ、喜ばせたのだとか。

 

キャプションによると、切り花さえも花の死骸のようだと言って人の手が加わっているものを絵に描きたくなかったという、守一。

たしかに『玩具』という絵以外は人や動物、植物、風景、虫などばかりです。

晩年、76歳あたりから家から出なくなった守一は、家の庭の植物や虫、

飼っている鳥などを観察して特徴を捉えて描いています。

 

平面的で、そのものがそれらしく見える最小の数の線で描かれているよう。

色は鮮やかで生き生きとして見えます。

 

アンリ・マティスが体調を崩し、晩年に切り絵で作品を制作していたのと

似ているなぁと思いながら絵を見ていたのですが、

切り絵は輪郭線がなく、色が混ざって重なりあうことはありません。

守一の絵は1つの輪郭線の中に一色だけの時もあれば、色を重ねている時もある。

だから何だと言われたら特に結論はないのですが、似てるけど違うのが分かったのが

今回の展覧会の私の収穫です。ほくほく。

 

敷地内の花壇の輪郭線があるように見える植物。

守一だったらどんな風に描くのでしょうか。

 

熊谷守一 いのちを見つめて | 久留米市美術館 | 石橋文化センター

 

久留米市美術館の『熊谷守一 いのちを見つめて』展の後は1階の『久留米絣作品展』と『日本の伝統美と技の世界』へ。どちらも入場無料で2019年12/1(日)まで。

写真撮影可能なものと、不可なもの有。

和服の布地や和紙に触れられるコーナーもあります。

 

『技の世界』の着物の生地は久留米絣の他に小千谷縮越後上布結城紬、喜如嘉の芭蕉布宮古上布、久米島紬も見られます。久米島紬を初めて見たのですが、

黒をベースに茶色やベージュの模様のものがあってキュンとしました。

伊勢型紙も初めて見て、驚きがいっぱいでした。

 

知らなくてもコワくないよ『アジア美術、100年の旅』福岡アジア美術館

のんびりしてたらあっという間に会期終了間際のアジ美に行ってきました。

(2019年11.26日まで!)

アジ美こと福岡アジア美術館はアジアの近現代美術を専門的に紹介する

世界に唯一の美術館として1999年に開館し、今年はなんと開館20周年。

博多座の隣にあるリバレインセンタービルの7・8階にあります。

 

今回の展示は第一部が「東アジア」「東南アジア」「南アジア」の3つのエリアに分けて、それぞれの地域性が色濃く表れている作品を中心に展示してあるということで

展示室を歩きながら旅するように見ていきます。

 

 

それぞれ3つのエリアごとにそのエリアに関する本や旅のガイドブックなどが

置かれていて、本を読むこともできます。

本の横にはアジ美併設のカフェで食べられるセットの紹介も。

 

 

さて、皆さんはアジア美術、しかも近現代のアジア美術なんて学校の授業で習いましたでしょうか?

数十年前の学生の私の記憶を振り返ると、さっぱりなかった気がします。

教科書に載っているような西洋絵画のように

「この展覧会に行けばこの作品が見られる」

という予定調和の安心感がないゆえに、どうしても行くのがおっくうになってしまう

気持ちと、休日は家でダラダラしていたい気持ちが相まって会期終了間近の来館となったのでした。

 

そして気になる展覧会の様子をば。

今回の展覧会はすべて写真撮影OKで、撮影に集中すると実物をよく見ない癖が発動するのでなるべく絞って撮影しようと決心し、会場入り。

しかし、結果は69枚写真を撮っていました。決して優柔不断ではなく、ブログの資料として必要になるかもって思ったからです。(小声)

 

全部を載せるのは難しいので、特に気になったものを紹介。

モンゴルの方で、ダグヴァサムブーギーン・ウーリントゥヤ『わたしは凧』

空に浮かぶ女性の姿が気持ちよさそうなところと、切り離されたいと考えている眼下の人間たちの姿にもどこか愛嬌があって、憎めないところがあります。

 

そして所変わって壁一面にパキスタンの映画ポスター。一体どんな内容なんだろう、と想像が膨らみます。その国の女性のお洒落や美人像などが分かる気がします。体型はふっくらで唇は厚め、目に力を入れたメイク、ロングヘアが基本、なのかな。

1969~1984年に制作されたポスターなので、現代はもっと違う価値観になっているのかも?

 

 

 

第二部の「アジアのなかの福岡」ではアーティストたちが福岡に滞在して作品を生み出す、アジア美術館の滞在制作事業によって生み出された作品の展示がありました。

 

映像作品でお見せ出来ないのが残念ですが、

中国の方でチュンリン・ジョリーン・モク『店を見る』

 

川端商店街の16店舗を撮影したビデオです。

ナレーションは出てくるお店の息子さん。

帽子店、洋服店、ししゅうのお店など、商店街で見かけるお店がたくさん出てきます。

商店街で働く人たちがどんな風な1日を過ごしているかを淡々とありのままに、

映しています。お店の人から聞いたエピソードも有り。

派手なことは起こらないけど、経験したことのない誰かの日常って面白いです。

知ってるようで知らないことを発見できたビデオでした。

 

 

 

アジア美術ってどんなものかぷらっと

美術館を旅してみると自分の好きな作品が見つかるかもしれません。

知らなくても怖くないですぞ。

faam.city.fukuoka.lg.jp

思わずじっくり見たくなる『新たな髙島野十郎展』

終了間近の展覧会に滑り込みで行ってきました。

福岡県立美術館、4階展示室で『新たな野十郎展』

会期は2019年11月24日(日)まで!

 

髙島野十郎は久留米市出身の洋画家で、2015年に県美で大規模な回顧展があり、

初めて知りました。

からすうりや蓮、月やロウソクなど、名前は知らなくても

ポスターや本などで絵を見かけた方も多いのではないでしょうか。

 

 

4年ぶりの今回の展示は新たに収集された作品などの展示が

あります。

 

前回見た時に気に入っていた「からすうり」(1948年以降)。

グレーがかったベージュ色の壁に吊るされた赤や黄色の色鮮やかなからすうりがたくさんぶら下がっています。

ドライフラワーを壁に飾っているような、そんな感じです。

葉はしおれ、枯れた色になっているものの、からすうりは丸みを帯びてみずみずしく

色鮮やかで印象に残ります。

 

この絵の隣には初めて展示される1935年に描かれた「からすうり」。

さっきのからすうりより13年も前に描かれたものだそうですが、

壁に吊り下げられたからすうり、という点は一緒です。だけどよく見ると

実よりも葉が多く、実が画面の上の方にあります。

実の形は楕円が多く、色は赤系ばかり。

後から描かれたものは実の形も楕円、丸い物、いびつなもの、赤以外にオレンジなどの

色の実もあります。

からすうり以外に黒くて丸い粒粒した野草も加わり、

野十郎が同じテーマで新しい試みをしていたのがよく分かります。

 

そしてその近くの壁に寄贈された「からすうり」があります。

こちらも1948年以降に描かれたものですが、前記した二つの絵とかなり構図が違います。

並んでいる「からすうり」は壁をバックにしていますが、

近くの壁の「からすうり」の絵は屋外。空をバックに、まだ紅葉しかけの

葉とともにかすかに実をつけるからすうりの絵です。

新しい構図を探していたのでしょうか。

 

そして失礼ながら予想外に面白かったのが野十郎と知人の方のお手紙のコーナー。

手紙だけでなく、壁に書き下し文が展示されているため、手紙の字が読めなくても

読めるのが有難いところ。

 

画集を送ってくれても見ないし自分に必要があれば絵を見に行くから画集はいらない。

服は押し入れにしまうか土に埋めるかするから送らなくてもいい、というようなことが書いてあったり。

いらない、と一言で済ますのではないところに

厳しいけれどどこかユーモアがあって、絵に対してストイックな人だったんだろうな

ということが感じられるのでした。

 

お時間あればぜひ。

fukuoka-kenbi.jp

 

 

三国志の時代の動物集合! 九州国立博物館「三国志」展

九州国立博物館で開催中の『三国志』展に行ってきました。

今回は会場内すべて撮影OKということでたくさん写真を撮ってきました!

 

入場すると一番気になっていた関羽像がさっそくお出迎え。

むむむ、美関羽です。

胸を張り、指先や足の先まで力がみなぎっているのを感じさせるような

キリっとした全身と、細かいところまで丁寧に表現された鎧にため息が

出そうです。

 

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 馬に牛に羊。身近に居るせいかリアルです。

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棺を置く台座は虎!『虎型棺座(とらがたかんざ)』。

呉の皇族級の人物が葬られたと推測されるそう。

口を開けて威嚇しているのでしょうが、

肩のところの四つ葉マークや全体的に四角いところに愛嬌があります。

 

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ライオンと犬。

右の写真は「辟邪(へきじゃ)」という有翼の架空の動物。

侵入者を威嚇し、墓主を天上の世界へ導く役目が期待されたのだとか。

右肩にちょこんととまったハシビロコウのような鳥も気になるところ。

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 カニやカエルも。

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 「ゆるかわ」な水鳥と犬。

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 翡翠で作られた『玉豚』。f:id:tabikan-yosito:20191102094747j:plain

高貴な人物が埋葬される際に手に握らせたという。

これがあれば死後の世界でお肉に困らない!

 

 

動物以外もたくさん展示されているのですが、今回は思い切って

生き物だけをピックアップしてみました。三国志を知らなくても

楽しめますね。

三国志に詳しい方は今回の展覧会を観たあとに、

三国志関連の物語を楽しむときに想像が膨らんでより楽しめそうです。

 

 

 

 

 

九博の「三国志」展の紹介動画です。

 

このブログはぶろぐるぽに参加しています。次の展覧会のチケットなどが

当たる場合もあるので、ブログを書く方はぜひエントリー!

www.kyuhaku.jp

 

 

ミーハーな元審神者が福岡市博物館で『侍展』を見てきたでござる。

急に肌寒くなった10月の半ば、平日にもかかわらず

福岡市博物館の特別展の展示室は静かな熱気に包まれておりました。

 

広い展示室には刀の展示ケースがずらりと並び、

その前に20代から40代くらいの女性たちが静かに、しかし熱心に

刀の一振り一振りをじっくり見つめています。

 

刀剣乱舞のオンラインゲームはやめてしまったけれど

にぎわっているので自分も見てみたい!というミーハー魂に突き動かされて来館。

むむむ、これは予想以上に女性が多い。9割がた女性ではあるまいか。

 

前売りの引き換えチケットはこちら!(めくると長谷部が居ます!)

 

少しかがんで刀に目線を合わせる。

右から左、左から右に視線を移動しながら眺めていると

「鍛え(地鉄に現れた肌目の模様)」や

「刃文(焼き入れの技術によって生ずる模様)」が

見やすいような気がします。

 

会場のいくつかの刀に「私のイチおし」のキャプションが。

通常の解説文とは別に、一般の方が考えた刀の見どころや熱い思いなどが書かれていて

みんな史実に詳しすぎでは? と思いながら楽しく読みました。

うろ覚えですが「海の上で渡された短刀だから鍛えが波の渦のように見える」

みたいな感じで書いてあったりするのです。

刀の見方の本などを読むと、用語を理解しなくっちゃ!

と謎の強迫観念におそわれ「私まだ理解できてないのに見たくないなぁ」などと

博物館に向かう足が鈍っていたので、

こういう刀剣鑑賞ライト層にも優しいとっかかりがあると有難い気がしました。

 

そしてびっくりだったのが刀の4K映像。

圧切長谷部と日光一文字の紹介映像で、黒い背景のなか

刀がまるで透明なクリスタルで出来ているように浮かび上がっています。

鍛えや刃文がくっきりと映し出される様はまるで星空や宇宙を見ているようでした。

 

そして刀以外でのお勧めは鎧。

大鎧に使われている布や紐がカラフルで色遣いにキュンとしてしまいました。

時代が変わるにつれて鎧の形も色々と進化をしていく様子が

展示品を見ていくと分かるようになっています。

 

有料の音声ガイドを借りて聴きながら、ゆっくり見ていると2時間半が経っていました。解説は声優津田健次郎さんの低くて優しいナレーションボイス21件と

日本号として喋っている3件のボーナストラックが聴けますぞ。

 

 特別展「侍」~もののふの美の系譜~は2019年11月4日(月・振休)まで!

samurai2019.jp

 

 ~おすすめの1冊~

図解 日本の刀剣(てのひら手帖)

私のようなライト層にも優しい解説と情報量。初心者向けで読みやすいです。

 

 

そうだったのかぁ! リニューアル後の福岡市美術館と仙厓展

リニューアル後のレストランでランチをした後は、モロー展を観て館内を散策です。

今回は写真多めのブログをお届けします。

 

 

こちらは、レストラン近くのかまぼこ型の天井と窓とお洒落な照明。

 

振り返った一角に、建築みどころガイドマップなるものを発見。

この家具は天童木工製の特注品。

そうだったのかぁ。

 

マップを見ないと永遠に気が付かなかったみどころ。

聞きなれない名前の「はつりコンクリート」。

コンクリートの表面を特殊な工具で叩いて削る「はつり加工」が施されているそう。

そ、そうだったのかぁ!

 

モロー展のチケットでコレクション展示室の2階近現代美術と1階の古美術を見ることが出来ます。近現代美術ではアニッシュ・カプーアの《虚ろなる母》の展示の見せ方に

グッときてしまいました。これはぜひその場で見てほしい作品です。

 

1階コレクション展示室 古美術。東光院仏教美術室、松永記念館室、企画展示室の3つの部屋があります。

1番広い、奥の企画展示室では仙厓さんの絵や愛用の道具が展示されています。

(写真は撮影可能なエリアで撮影しています)

東光院仏教美術展示室。十二神将はなくなったのかしら・・・と勝手に思っていたら

カッコイイことになっていました。黒い背景に映える仏像たち。

 

朝ドラの「なつぞら」をご覧になっていた方なら「じいちゃん」と

呼びたくなりそうな

十二神将立像 因達羅大将(いんだらたいしょう)・巳神(みしん)」

 

 

仁王像の阿形と吽形のどちらの方が重たいか、という質問の答えは

この背中にアリ。

 

 松永記念館堂では尾形乾山の《花籠図》が目を引きました。乾山は光琳の弟。

 

メインの企画展示室で、仙厓さんの絵とご対面。 

仙厓さんの絵は見ているとクスッとしてしまいます。

 

 

 

今回の大発見は外壁のこの壁!「打ち込みタイル」工法により取り付けられたこのタイルは愛知県の常滑焼の窯で焼かれた特注品。壁に近寄るとクレームブリュレのようで美味しそう。

 

 

遠目に観ると釉薬の反射具合によって1枚1枚異なる表情を見せてくれます。

普段作品ばかりに目が行きがちだけどガイドマップや公式サイト

読んでいくとこんなところにも力を入れていたのだな~と新しい楽しみ方が広がりそうです。建築家の前川國男さんという名前も覚えましたぞ。

 

それとリニューアルで一番有難かったのはお手洗いが広く、

明るく綺麗になったことです!わ~い!

ミュージアムショップでは仙厓さんのトートバッグなども販売されています。

 

 

仙厓さんの展示は2019年12月1日(日)まで。

www.fukuoka-art-museum.jp

 

~おススメの一冊~

『仙厓の〇△□ 無法の禅画を楽しむ法』中山 喜一朗(著)
絵を通して博多での仙厓さんの暮らしぶりや人柄などが想像できる
とても読みやすい本です。美術館に展示されないような笑ってしまう下ネタ絵も!
 

福岡市美術館で『ギュスターヴ・モロー展 サロメと宿命の女たち』

地下鉄の大濠公園駅を出て、公園内を歩いていると

突然たくさんの外国人の観光客が!

美術館から出てきた人たちだろうかと団体さんがやって来る方に

行ってみると、どうやら福岡城跡を観光して来たようす。

美術館までの道のりは日差しを遮るものがないので

まだまだ日傘が必要ですが風は涼しくなってきました。

 

 

昼時だったのでリニューアルしたレストランでランチ! 

市美には以前からレストランはあったのですが、

3月のリニューアル後はホテルニューオータニ博多が運営を任されていて

店舗内もお洒落な内装になっていました。

2階にはレストラン。1階にはカフェが出来ています。

 

さて、今回の目的は「モローのサロメ」です。

本来は母親にそそのかされてヨハネの首を求めたにすぎないユダヤの王女サロメ

ですが、モローの描いた《出現》に出てくるサロメは、

まるで自らヨハネの首を欲しがったような強い意志を感じる女性に描かれています。

《出現》以外にもサロメを描いた作品がいくつかあって、モローが

同じテーマで繰り返し描いていたことが分かります。

 

下のこの絵が《出現》です。

 

サロメ以外には見えていないヨハネの首。ひょえぇぇ。

サロメの口が開かれているのかどうか単眼鏡で見たもののぼやけていて

分からず。大きく開けているようにも見えるのだけど、どうなんでしょう。

 

この絵の好きな所は堂々としたサロメの周りのレイヤーのように重ねられた線の描写。

その当時発行された建築美術をまとめた本を参考に描いているそう。

線の描写はこの絵が描かれてから時間を置いて描かれたそうですが、

ほぼ完成しているものに手を入れてみようと思うなんてチャレンジャーな気がします。

結果、線の描写がないよりもある方が画面に神秘的な雰囲気が生まれて

現実ではない世界の絵に観る人は引き込まれてしまうのでした。

 

会場にはサロメ以外にセイレーンやスフィンクスなどモローが描いた

ファム・ファタル《宿命の女》たちが。

絵が飾ってある壁もピンクや紫など色鮮やかで絵を引き立てていました。

観る方のテンションも上がります。

 

こちらは《一角獣》

 

処女の前にひれ伏すと言われるユニコーン

一角獣を捕らえるために処女をおとりに使うなんて話もあるようですが

この絵の中の女性と一角獣は仲が良さそう。首や頭にアクセサリーをつけてもらって

ペットのような雰囲気です。

貴婦人と一角獣》のタピスリー(壁掛け)にインスピレーションを受けて

創作されたそう。

貴婦人と一角獣 - Wikipedia (Wikiにタピスリーの画像があります)

 

《一角獣》の絵が描かれたのが1885年頃。

このタピスリーは1841年にフランスのブーサック城にあることが発見され、

1882年に国立中世美術館にタピスリーが移された、ということなので

モローも実物を見ていたのかもしれません。

 

タピスリーの貴婦人は脱いでないけれどモローの貴婦人の一人は帽子とマントと宝飾品だけを身にまとっている、という艶めかしい姿です。ただ、身にまとっているそれらと

女性の表情から高貴な女性の雰囲気が醸し出されていて、どことなく上品な感じ。

 

右側の女性の肌の白さがユニコーンの白さと対になっていて

女性たちが着ている赤いマントやドレスで画面が締まっている。

モローはそんな効果を狙ったのでしょうか。

 

 

サロメの背景の線画やユニコーンのタピスリーのエピソードを知って、

モローは自分が見たものや知ったことをどんどん絵に取り入れていたのが分かって

少しだけモローのことが分かった気になりました。

 

 

 2019年11月24日(日)まで。

www.fukuoka-art-museum.jp