ヨシトのたびかん

主に福岡。ときどき県外の美術館までの小さな旅や展覧会の感想など

福岡市美術館で『ギュスターヴ・モロー展 サロメと宿命の女たち』

地下鉄の大濠公園駅を出て、公園内を歩いていると

突然たくさんの外国人の観光客が!

美術館から出てきた人たちだろうかと団体さんがやって来る方に

行ってみると、どうやら福岡城跡を観光して来たようす。

美術館までの道のりは日差しを遮るものがないので

まだまだ日傘が必要ですが風は涼しくなってきました。

 

 

昼時だったのでリニューアルしたレストランでランチ! 

市美には以前からレストランはあったのですが、

3月のリニューアル後はホテルニューオータニ博多が運営を任されていて

店舗内もお洒落な内装になっていました。

2階にはレストラン。1階にはカフェが出来ています。

 

さて、今回の目的は「モローのサロメ」です。

本来は母親にそそのかされてヨハネの首を求めたにすぎないユダヤの王女サロメ

ですが、モローの描いた《出現》に出てくるサロメは、

まるで自らヨハネの首を欲しがったような強い意志を感じる女性に描かれています。

《出現》以外にもサロメを描いた作品がいくつかあって、モローが

同じテーマで繰り返し描いていたことが分かります。

 

下のこの絵が《出現》です。

 

サロメ以外には見えていないヨハネの首。ひょえぇぇ。

サロメの口が開かれているのかどうか単眼鏡で見たもののぼやけていて

分からず。大きく開けているようにも見えるのだけど、どうなんでしょう。

 

この絵の好きな所は堂々としたサロメの周りのレイヤーのように重ねられた線の描写。

その当時発行された建築美術をまとめた本を参考に描いているそう。

線の描写はこの絵が描かれてから時間を置いて描かれたそうですが、

ほぼ完成しているものに手を入れてみようと思うなんてチャレンジャーな気がします。

結果、線の描写がないよりもある方が画面に神秘的な雰囲気が生まれて

現実ではない世界の絵に観る人は引き込まれてしまうのでした。

 

会場にはサロメ以外にセイレーンやスフィンクスなどモローが描いた

ファム・ファタル《宿命の女》たちが。

絵が飾ってある壁もピンクや紫など色鮮やかで絵を引き立てていました。

観る方のテンションも上がります。

 

こちらは《一角獣》

 

処女の前にひれ伏すと言われるユニコーン

一角獣を捕らえるために処女をおとりに使うなんて話もあるようですが

この絵の中の女性と一角獣は仲が良さそう。首や頭にアクセサリーをつけてもらって

ペットのような雰囲気です。

貴婦人と一角獣》のタピスリー(壁掛け)にインスピレーションを受けて

創作されたそう。

貴婦人と一角獣 - Wikipedia (Wikiにタピスリーの画像があります)

 

《一角獣》の絵が描かれたのが1885年頃。

このタピスリーは1841年にフランスのブーサック城にあることが発見され、

1882年に国立中世美術館にタピスリーが移された、ということなので

モローも実物を見ていたのかもしれません。

 

タピスリーの貴婦人は脱いでないけれどモローの貴婦人の一人は帽子とマントと宝飾品だけを身にまとっている、という艶めかしい姿です。ただ、身にまとっているそれらと

女性の表情から高貴な女性の雰囲気が醸し出されていて、どことなく上品な感じ。

 

右側の女性の肌の白さがユニコーンの白さと対になっていて

女性たちが着ている赤いマントやドレスで画面が締まっている。

モローはそんな効果を狙ったのでしょうか。

 

 

サロメの背景の線画やユニコーンのタピスリーのエピソードを知って、

モローは自分が見たものや知ったことをどんどん絵に取り入れていたのが分かって

少しだけモローのことが分かった気になりました。

 

 

 2019年11月24日(日)まで。

www.fukuoka-art-museum.jp