ヨシトのたびかん

主に福岡。ときどき県外の美術館までの小さな旅や展覧会の感想など

『挑む浮世絵 国芳から芳年』福岡市博物館で「よしよし」展

国芳は好きなんだけど芳年は怖いイメージがあって、

行くのをためらっていたヨシトです。

しかし、芳年の「よしと」までは名前がかぶっているし、

ツイッターで音声ガイドがゲームやアニメでよく存じ上げている

声優の鳥海浩輔さんと知ったからには行かねばなるまい。

 

それに芳年の怖い以外の一面に出会えるかもしれないと淡い期待を胸に抱きつつ

ヨシトは一路、福岡市博物館へ向かうのだった。

 

『挑む浮世絵 国芳から芳年へ』は 

歌川国芳(1797-1861)と月岡芳年(1839-1892)がメインの浮世絵の

展覧会。国芳の元にはたくさんの弟子がおり、芳年国芳の弟子の一人。

展示の終わりの方には芳年以外の弟子の作品もあり。

見ていくと、これでもかこれでもか、と

当時の人が見たら驚いたんじゃないかという臨場感あふれる

浮世絵がたくさん並んでいました。

 

 

 

国芳の「児雷也(じらいや)と大蝦蟇(おおがま)」

児雷也の敵はNARUTOを知っている方なら答えられるであろう、

大蛇丸(おろちまる)! 真ん中だけだと地面で戦っているように見えるけれど、

3枚揃うとこういうことか! と分かって面白い。

 

 

 

途中、進んでいくとこんなお触書が。

 

怖い絵を見ない選択もできますが、ここまで来たからには見ないで帰れません。

進撃の巨人』『鬼滅の刃』『PSYCHO-PASS サイコパス』『東京喰種』『寄生獣

など血みどろシーンのある漫画やアニメなどを見てきた私ではありますが、

自分の知らない恐怖があるのでは、と思うとちょっと足がすくみます。

(2)の関所でチェックした後、

通路の先に頭だけ突っ込んで人が居ることを確認して、いざ中へ。

(これ以降、過激な表現の浮世絵の写真があります。OKの方のみスクロールして

お進みください)

 

 

月岡芳年

「英名二十八衆句(えいめいにじゅうはっしゅく) 由留木素玄(ゆるぎもとはる)」

 怖いのは見たくないけど、文字だけでなく着物や小道具まで細かく描かれていて、

ついついまじまじと見てしまう。真下から見ると着物に模様が見える仕掛けも。

手が込んでいます。

 

 

 

怖い絵のコーナーを抜けてホッと一息。

月岡芳年「皇都会席別品競 久保町売茶亭 春本いく」

こんなところに猫が。国芳の猫好きは芳年にも受け継がれていたのかな?

 

芳年のとってもセクシーな浮世絵。

「風俗参十二相 かゆさう 嘉永年間かこゐものの風ぞく」

下がり気味の眉と目と少し開いた唇が色っぽい。

 

絵草紙屋の展示も。

 

  

そして今回私の中の芳年像が変わった「一ツ家」のコーナーへ。

 

 

国芳46歳ごろの「観世音霊験(かんぜおんのれいげん)」

 

 

芳年34歳。「一魁随筆 一ツ家老婆」

 

芳年47歳。「奥州安達がはらひとつ家の図」

吊るされた妊婦が実の娘だと知らずに、

老婆があやめてしまう場面。老婆の体は細いけれども、まっすぐ妊婦を見る眼差しや

包丁を研ぐ手つきに一人で人をあやめて生き抜いてきた逞しさを感じてしまう。

芳年が老婆にこめたリアルさを感じる。

 

芳年52歳。「月百姿(つきひゃくし)孤家月(ひとつやのつき)」

老婆が火をつけようとする縄の先には石が吊るされ、その下には旅人が。

旅人の運命やいかに!見る人がハラハラドキドキ。

 

 

 

 終わりよければすべて「よし」。国芳「浮世よしづ久志」

 

怖い浮世絵もあったけど、時代に合わせて

進化をやめない国芳芳年たちの挑戦を見た展覧会でした。

音声ガイドは「よしよし」言われるので名前によしのつく方は

ぜひ借りるが「よし」です。

 

 

【おまけ】 

実はキャンペーンに惹かれて、期日までに行って感想ツイートをしてみたら……。

ありがたいことに当選しました!

福岡市博物館所蔵、旧吉川観方コレクションの国芳芳年の浮世絵のカレンダーです。表紙は国芳の「相馬の古内裏」の3枚続きのうちの2枚。

黒い背景に浮かび上がる巨大な白い骸骨。屋内に居る人間を覗き込む仕草に

これから始まる闘いの予感を感じてワクワクする浮世絵です。

今回の展覧会ではこのカレンダーに無い左端の1枚を見ることが出来ますよ。