入門編にちょうどいい『熊谷守一 いのちを見つめて』久留米市美術館
最近、出不精のわりによく出歩いているヨシトです。
今回は、映画『モリのいる場所』でご存知の方も多いはず、
会期は2020年の1月13日(祝日)まで。(展示室内の撮影は不可です)
美術館がある石橋文化センターの敷地の池の白鳥。
イチョウの落ち葉が絨毯のように広がっています。
熊谷守一の初期の作品から看板にあるような晩年までの作品がずらりと並ぶ展覧会に
なっていました。
作品や年表を見ると生きている時から売れっ子の画家だったことが分かります。
『モリのいる場所』の題名だけ知っているような私にも優しい、
【入門編】の熊谷守一展と言えそうです。
守一は岐阜の生まれで、同じく岐阜出身で博多の聖福寺のお坊さんの
仙厓さんの言葉を書にしたものもありました。
「ぐるりと家を取りまく貧乏神 七福神は外へ出られず」
仙厓というサインまで大きく書いてあるところがこの言葉を知らない人にも優しい。
検索してみると、新築祝いに家の主から何か書いてと頼まれて
仙厓が書いた言葉だそう。
貧乏神まで書いて一呼吸置き、主を慌てさせたあと、
下の句でほっとさせ、喜ばせたのだとか。
キャプションによると、切り花さえも花の死骸のようだと言って人の手が加わっているものを絵に描きたくなかったという、守一。
たしかに『玩具』という絵以外は人や動物、植物、風景、虫などばかりです。
晩年、76歳あたりから家から出なくなった守一は、家の庭の植物や虫、
飼っている鳥などを観察して特徴を捉えて描いています。
平面的で、そのものがそれらしく見える最小の数の線で描かれているよう。
色は鮮やかで生き生きとして見えます。
アンリ・マティスが体調を崩し、晩年に切り絵で作品を制作していたのと
似ているなぁと思いながら絵を見ていたのですが、
切り絵は輪郭線がなく、色が混ざって重なりあうことはありません。
守一の絵は1つの輪郭線の中に一色だけの時もあれば、色を重ねている時もある。
だから何だと言われたら特に結論はないのですが、似てるけど違うのが分かったのが
今回の展覧会の私の収穫です。ほくほく。
敷地内の花壇の輪郭線があるように見える植物。
守一だったらどんな風に描くのでしょうか。
熊谷守一 いのちを見つめて | 久留米市美術館 | 石橋文化センター
久留米市美術館の『熊谷守一 いのちを見つめて』展の後は1階の『久留米絣作品展』と『日本の伝統美と技の世界』へ。どちらも入場無料で2019年12/1(日)まで。
写真撮影可能なものと、不可なもの有。
和服の布地や和紙に触れられるコーナーもあります。
『技の世界』の着物の生地は久留米絣の他に小千谷縮、越後上布、結城紬、喜如嘉の芭蕉布、宮古上布、久米島紬も見られます。久米島紬を初めて見たのですが、
黒をベースに茶色やベージュの模様のものがあってキュンとしました。
伊勢型紙も初めて見て、驚きがいっぱいでした。