ヨシトのたびかん

主に福岡。ときどき県外の美術館までの小さな旅や展覧会の感想など

思わずじっくり見たくなる『新たな髙島野十郎展』

終了間近の展覧会に滑り込みで行ってきました。

福岡県立美術館、4階展示室で『新たな野十郎展』

会期は2019年11月24日(日)まで!

 

髙島野十郎は久留米市出身の洋画家で、2015年に県美で大規模な回顧展があり、

初めて知りました。

からすうりや蓮、月やロウソクなど、名前は知らなくても

ポスターや本などで絵を見かけた方も多いのではないでしょうか。

 

 

4年ぶりの今回の展示は新たに収集された作品などの展示が

あります。

 

前回見た時に気に入っていた「からすうり」(1948年以降)。

グレーがかったベージュ色の壁に吊るされた赤や黄色の色鮮やかなからすうりがたくさんぶら下がっています。

ドライフラワーを壁に飾っているような、そんな感じです。

葉はしおれ、枯れた色になっているものの、からすうりは丸みを帯びてみずみずしく

色鮮やかで印象に残ります。

 

この絵の隣には初めて展示される1935年に描かれた「からすうり」。

さっきのからすうりより13年も前に描かれたものだそうですが、

壁に吊り下げられたからすうり、という点は一緒です。だけどよく見ると

実よりも葉が多く、実が画面の上の方にあります。

実の形は楕円が多く、色は赤系ばかり。

後から描かれたものは実の形も楕円、丸い物、いびつなもの、赤以外にオレンジなどの

色の実もあります。

からすうり以外に黒くて丸い粒粒した野草も加わり、

野十郎が同じテーマで新しい試みをしていたのがよく分かります。

 

そしてその近くの壁に寄贈された「からすうり」があります。

こちらも1948年以降に描かれたものですが、前記した二つの絵とかなり構図が違います。

並んでいる「からすうり」は壁をバックにしていますが、

近くの壁の「からすうり」の絵は屋外。空をバックに、まだ紅葉しかけの

葉とともにかすかに実をつけるからすうりの絵です。

新しい構図を探していたのでしょうか。

 

そして失礼ながら予想外に面白かったのが野十郎と知人の方のお手紙のコーナー。

手紙だけでなく、壁に書き下し文が展示されているため、手紙の字が読めなくても

読めるのが有難いところ。

 

画集を送ってくれても見ないし自分に必要があれば絵を見に行くから画集はいらない。

服は押し入れにしまうか土に埋めるかするから送らなくてもいい、というようなことが書いてあったり。

いらない、と一言で済ますのではないところに

厳しいけれどどこかユーモアがあって、絵に対してストイックな人だったんだろうな

ということが感じられるのでした。

 

お時間あればぜひ。

fukuoka-kenbi.jp