『三國万里子展 編みものけものみち』三菱地所アルティアム
ほぼ日刊イトイ新聞やNHKのテレビ番組『世界はほしいモノにあふれてる』などでご存知の方も多いはず、三國万里子さんの展覧会が福岡県の天神、イムズ8階三菱地所アルティアムで開催中です。2021年1月31日(日)まで。
三國さんが持ってらっしゃる海外の編み物の雑誌なども展示。
作品などは普段展示ケースに入れてあるのが普通ですが、床に服が置かれているのが新鮮でした。
並べ方も可愛いくて、あっちこっち写真を撮りたくなります。(会場内撮影可能)
箱自体も可愛いくて撮ってしまいました。
三國さんが愛用しているアクセサリー。
色が鮮やかでニットのぬくもりをガラス越しではない空間で見ることができて、ほっこり。編めなくてもワクワクして楽しくて、自分で何か作るのって良いなと思える展覧会でした。
ミュージアムショップでは三國さんの本や毛糸の帽子などのキットの販売も有りました。(12月時点)
次回は東京に巡回予定だそうです。
入場者数の制限や整理券の配布などもあるようですので、お出かけ前にほぼ日の公式ツイッターをチェック!
ほぼ日曜日(渋谷パルコ8F)2021年2月7日(日)~2月28日(日)
福岡市美術館『ソシエテ・イルフは前進する 福岡の前衛写真と絵画』
戦前の福岡で結成された前衛美術グループ「ソシエテ・イルフ」。
一体どういうグループなんだろう?とチラシを見た時から気になっていて1月の上旬に行って参りました。
特別展のヒグチユウコ展と向かいの、コレクション展示室の近現代美術室Bで2021年3月21日まで開催中で、観覧料は一般200円。こちらの料金で2階の近現代美術室A,B,Cと1階のコレクション展示室古美術が観られるのでとってもお得です。
そして特別展に比べると人が少ないのでソーシャルディスタンスを保ちながらゆっくり観られるのも良いところです。
1930年代半ばに集結し「古い」の逆さ読みから「ソシエテ・イルフ」を名乗るようになったメンバー達。彼らが影響を受けたロトチェンコやナジ・ラースロー、マン・レイの作品の部屋のあとにメンバー達の作品がありました。
私は上記だとマン・レイ以外の写真は見たことがなくて、展示室にはロトチェンコの写真が他の二人よりも多く展示されていたので、ロトチェンコびいきになりました。
ハシゴをのぼる人を下から撮るなど、いつもの風景をよくこんな構図で撮ろうと思ったな〜という写真が展示されています。
初めに海外の作品を見ることでメンバーたちが海外の作品を自分たちなりに取り入れていったんだなというのが分かる展示の流れになっていて、先ほどの記憶があるうちにメンバーの写真を見ることができるので写真に詳しくなくても「ムム、これは先ほどのと雰囲気が似ているな」と思えて観るのが楽しいです。
高橋渡、久野久、許斐儀一郎、田中善徳、吉崎一人、小池岩太郎、伊藤研之たちメンバーの写真や絵画の作品が展示されています。
図録を持っていないので記憶が曖昧ですが、昔の写真雑誌にイルフの元に招待された県外の写真界隈で権威のある方が書いた記事が展示されていて「九州弁」のような個性を期待していたが東京や大阪の真似だ、というようなことが書いてあって、その横の記事でイルフのメンバーはそれに関しては特に何も言ってなくて、○○さんは嵐のようにすぐ来てすぐ帰って行った、みたいなことを言っていてそれが雑誌に載っているって大丈夫なのと、ゆるさを感じてちょっと笑ってしまいました。前衛写真にも「地方」っぽさを求める視線があったのだな~というのも面白い発見でした。
観ていく中で好きだなと思ったのは吉崎一人の(ボートと階段を昇る人)
(パンフレットに()付きのタイトルなっているのは何か意味があるのでしょうか)
ボートと海に面した階段を昇る人の写真で、形の面白さが伝わってくる作品でした。
展示を見た中ではロトチェンコっぽさを一番感じました。
メンバー達も利用していた喫茶店ブラジレイロは福岡市博物館の常設展に内装が展示されているあれでは?と思って調べてみたら公式サイトには名前がなかったのですが、数軒のブログで名前を見かけるのでたぶんあってるかと。
博物館の改修工事が終わったら確かめに行ってみようと思います。
福岡最古の喫茶店ブラジレイロは移転先の呉服町で営業してるそうなのでこちらもコロナ渦が落ち着いたら行ってみたいところです。
ソシエテ・イルフは前進する 福岡の前衛写真と絵画 | 福岡市美術館
期間 2021年1月5日(火)~3月21日(日)
会場内撮影不可。ミュージアムショップで図録の販売あり。
不思議で怪しい?サーカス感たっぷり、福岡市美術館のヒグチユウコ展へ
12月に事前予約した時間に福岡市美術館の 『ヒグチユウコ展 Circus』へ行きました。
初日のせいかファンの方が多い気が。「東京の方はこうだったけど~」なんて言う声も聞こえてきます。
私のヒグチさん歴は、数年前に細かい描きこみのイラストに惹かれてホルベインコラボのクロッキー帳を購入したくらいの入り口レベル。
今回の展覧会はヒグチユウコさん自身初となる大規模個展として約20年の画業の中で描かれた500点を超える作品が公開されています。細部まで描きこまれた絵が多いのに量が半端ない!
そしてそれらがサーカスのテントの中に展示されているような、楽し気でちょっと怪しくて、次の部屋はどうなっているんだろう?とワクワクする仕掛けがたっぷりの会場になっていました。
(会場の出入り口で撮影)
会場内の写真は撮影不可ですが、一部展示室内のみ撮影スポットがあるのでスマホやカメラは鞄に入れておくのが良いです。
撮影スポットがある部屋ではヒグチさんが今回の展覧会チラシにも使われているイラスト《Circus》を描いている手元を撮影した映像が見られます。
「そこから描くんだ!」と驚くかも。
(以下2枚は撮影可能な展示室で撮影)
会場に原画が展示されていた絵本がありますね。
前回の藤田展に比べたら若い方が多く、子供連れで熱心に見ている方もいて、家族でファンの方も多いんだろうなぁと感じました。
子供からするとなんとなく怖そうな絵なので私はこれがちょっと意外でした。
展示を全部見終わってみると、映画のポスターなどの仕事以外のご自身のイラストや絵本には、血みどろだったりするような残酷な表現はないようでした。
だから子供も安心して見られるのかな。
大人が入れない壁の下の方に空いた子供用の出入り口の穴があったり、子供の背丈で映像を見る場所があったり、主催者側にも子供の需要があることが分かってるんだと思いました。
子供の頃細かい絵の絵本をじっと見ていた覚えがあるので、ちょっと怖いけどなんか好き、みたいな感じで私が子供の頃にヒグチさんの本があったら読んで虜になっていたかもしれません。
可愛さと不思議さと怖さを人間っぽいキャラクターの設定でぐるっと包んでいるところが怖いけど親しみやすいのかもなと怖がりなりに感じた展覧会でした。
展覧会を見終わったところ(入場しないと買えない場所)にあるグッズショップで。
会場で気に入った絵本を買いました。ホルベインとのコラボのクロッキーブックと、サイズごとに柄の違うペン。使えるグッズはありがたいです
ガチャガチャなどもありましたよ~。
日時指定のチケットを事前に予約購入制で2021年2月7日まで開催中。
はてなブログProを解約したとっても個人的な理由。
2020年1月に、はてなブログProに変更し、先日解約しました。
はてなブログProに悪い点があったというよりは自分の個人的な問題なので、自分の心を整理するべく書いてみようと思います。
そもそも、なぜはてなブログProにしようと思ったのか?
・記事が100記事を超えたのでGoogleアドセンスに挑戦しようと思った
・Proにすることで月額の料金を稼げるようになりたいという動機ができてアドセンス承認に向けて頑張れる気がしたから
はてなブログProにしてみて良かったこと
・広告が出ないので自分も見やすかった
・記事の一覧表示ができるのでスクロールしやすく見やすかった
はてなブログProをやめようと思った理由
・Googleアドセンスに挑戦する前に100記事書こうと思い書き溜めて挑戦したものの、重複する記事が多すぎてそれを訂正する気力がなかった。
(正確なことなのか分かりませんが、一度記事として公開したものをもう一度未公開にして書き直したものを公開すると、違うものとして認識されるらしい)
・そもそもProでなくとも、100記事も書かなくともGoogleアドセンスに受かる方法はあるらしい
(検索するとそういうブログが見つかる)
・新型コロナウイルス感染症で楽しいことを経験しても他者の目線を気にして書くのがはばかられた
そしてなにより、ブログを書くこと自体が無駄かもしれないと常々思っている自分がいる!
・人と比べて○○さんみたいなPV数を得るのは無理だから書くのはやめよう
・書いても上手くならないからやめよう
・書いてもお金にならないのだからやめよう
・それなら書いてお金になるなら楽しくなるのでは?と思ったがアドセンス不合格が続き、不合格を覆す努力もできぬまま、鬱々としている
特に年末はブログをやめるかやめないか毎年ウンウン考えてしまうのです。
自分のブログがお金を生み出すかと言うとゼロだし、むしろ電気代使ってマイナスだし(というか無料でこんなに書く環境を整えてくれているはてなブログなので還元せねばという気持ちはあるけれど)……もう、やめるしかないじゃん!
そんな簡単にやめられるか~!!
よくGoogleアドセンスに合格するために100記事書きましょうと書いてあることの良い点は書く習慣が身に着くことと、記事がたまってくるとやめるのが勿体ないという思いが湧いてくる点ではないかと考えています。
そう、私がほそぼそと10年以上ブログを続けているのは「やめるのがもったいない」からだ~!!
とりあえず、お金の問題はお金を稼げないのにブログを続ける意味があるのか?とブラックなワタシがツンツンと指摘してくるのでProを解約してみようと思いました。
山の頂上を目指すとすぐ心が折れてしまう私ですが、頂上にたどりつけなくても、全く書かない人生よりは書いてきた人生の方がそれなりに楽しかったよなと思います。
どこかに行ったり調べたりすることで自分の世界は広がりますし、思い込みが壊されて新しい発見が自分の中に生まれるのも楽しく、それを書き留めておけばずっと読み返すことができます。そのとき感じたことはなかなか後から思い出して書けませんから。
書く技術はただ書いているだけでは上がりませんがパソコンの前に長時間座っていられるスキルは、これからも書いていくのには役立つかもしれません。今のブログは10年前よりはたぶんマシなはず。
年末から今まで鬱々していましたが少し霧が晴れてきた気がしました。
今年も平々凡々な会社員兼ときどき展覧会に行ってブログを書く人ヨシトをよろしくお願いします。
ひさびさに『嫌われる勇気』を読み返して上記のようなことを考えました。山の頂上(未来)を気にして達成するのが難しそうだからやめよう、過去に失敗したから今これをやっても無駄になるはずと思うのはとりあえずやめようかと。
対話形式で読者が疑問に感じるようなことを青年がバシバシ聞いていくので物語としても面白い本です。人と比べない、承認欲求を否定するアドラー心理学の考え方を実践するのは難しいですが、こんな考え方があるのかと知るだけでも良いかと。
2020年お疲れさまでした
今年は新型コロナウィルス感染症に振り回された1年でした。
当たり前の日常が当たり前じゃなくなって、それが当たり前になりつつある日々。
展覧会に行っても何となく後ろめたさを感じ、楽しいことをしているのが申し訳ないような気持になったりしています。
でも、一瞬一瞬を見れば悲しいことばかりではなく、楽しい気持ちになったこともたくさんあったよな、と思ったり。
来年もまだまだ振り回されるのでしょうが、それを含めてブログを書いていけたらなと思います。
それでは、良いお年をお迎えくださいませ。
初めての民博へ
11月上旬、平日に行った展覧会で、書くのが遅くて会期が終了しておりますが初めて行った国立民族学博物館なので写真と記録だけでも!
(ツイッターの方では会期中になんとか紹介できたのでヨシとします)。
新大阪から千里中央でモノレールに乗り換えて万博記念公園駅で降りると、こんな感じの風景が広がっています。(新大阪からはだいたい30分ほどです)。
《対決!》
この大きな観覧車のふもとにはショッピングモールや水族館があり、家族連れがのんびりと過ごしていました。コロナ禍でなかったら平日でももっとお客さんでにぎわっているんだろうなぁ。
《観覧車から見た万博記念公園》
太陽の塔の後ろ、左側にある建物が国立民族学博物館です。
右側に円柱のようなものがある方が特別展の会場で、奥の方が常設展の建物。
公園の中や博物館の常設展はたくさんの中学生の社会科見学の姿を目にしました。
マスクにジャージ姿で広い公園の中をクラスの子たちと元気に動き回っている風景は、いつも通りではないんだけど、いつものような過ごし方が少しは出来ているのかなぁなどと思いました。
「万博記念公園駅」から徒歩15分。
おおげさな~!と思ったけれど公園内を突っ切るように歩くので結構歩きます。
公園の中央口で国立民族学博物館の特別展『先住民の宝』展のチケットを購入。
このチケットで常設展も見られました。880円。
《オラン・アスリの彫像》
特別展の展示は1階と2階に分かれていました。
1階に
アボリジニ (オーストラリア)
オラン・アスリ (マレーシア)
タオ(台湾)
アーディバーシー (ネパール)
マヤ(グアテマラ)
サン、ソマリ(アフリカ)
北西海岸先住民(カナダ)
サーミ(北欧)
2階に
アイヌ(日本)という展示でした。
アイヌの展示は野田サトルさんの漫画『ゴールデンカムイ』のデジタル原画(デジタル原画とは?って感じですが、紙に印刷された原稿サイズの漫画の一ページでした)と共に、作品に出てくる展示物が並んでいて、物と文章だけでは分からない使い方やシチュエーションが漫画で分かりやすく知ることができて面白かったです。
缶ぽっくり(缶下駄)の缶の部分が貝で出来た貝下駄などもありました。
ちゃんと漫画に描かれているのがすごい。
1階は、それぞれの民族の歴史や今置かれている状況を説明するパネルと展示品があり、現代に生きる人々の暮らしも分かるようになっているのが興味深く感じました。アボリジニのところで樹皮に描かれた絵の横に、シルクスクリーンの同じような絵が並べてあったり。
私が中でも気に入ったのはグアテマラのマヤのスペースの壁一面に展示されていたウイピルという女性用衣服でした。(写真を撮りたかった!)
貫頭衣といって頭からスポット被るタイプの服で、ブラウスのような薄さと丈に近いものが多く展示されていました。
(ウイピルと言っても長いものや厚手のものもあるようです)
色数の少ないものもあるのですが、服によっては肩や襟周りにほどこされた色鮮やかな刺繍がなんとも華やかで、これが全部手作業なのか~!と観る人をあんぐりさせてしまうこと間違いなしでした。
そんな刺繍が美しいウイピルもファストファッション化が進み、現代では刺繍ではなくプリントで表現したウイピルも出てきてデザインの権利を守る運動なども行われているのだそうです。安く可愛いものが手に入るのは嬉しいけど、刺繍の立体的な美しさや、ボリューム感みたいなものはないので何とかこの伝統が守られるといいなぁ。
特別展のミュージアムショップではウイピルも置かれていたのですが3万~、5万~と値札がついていたのでそっと戻しました。
特別展の写真は撮影不可ですが、公式サイトの紹介動画から展示の様子が分かります。
常設展は思ったより広すぎて、物も多いので迷子になりかけました。 撮影もほぼ可能。
思ったより大きい、太陽の塔。
ちょこん。
あまり見ることがない裏側。中に入る時間がなかったのでまた今度!
国立国際美術館『ロンドン・ナショナル・ギャラリー展』で再会
イタリア・オランダ・イギリス、スペイン、フランス。ロンドン・ナショナル・ギャラリーに集まった色々な作品たち。
『知らない人しか居ないんだけど!どうしましょ』と思いながら観て回っていたら、大塚国際美術館で見たトマス・ゲインズバラの絵があってちょっとほっとしました。
トマスって誰?って感じなのですが、私が大塚国際美術館で初めて出会ったトマスさんの2枚の絵は「トマスさん、モフモフが好きですよね!」という犬の毛並みや可愛らしさが出ている絵で、きっとこれがこの方の得意分野なんだろうな~と思っていたのです。
そして今回のロンドン・ナショナル・ギャラリー展では毛皮を身に着けた女性の肖像画《シドンズ婦人》(1785年)や、水飲み場で水を飲む牛やヤギたちの姿を描いた《水飲み場》(1777年以前)がありました。やはりモフモフ。動物の毛並みの再現に並々ならぬこだわりを感じます。
ゴッホの《ひまわり》は最後の部屋にあり、この絵を堪能するための解説などもしっかり書いてあってとても分かりやすかったです。
ゴッホのひまわり7作品の中の4番目にあたるひまわりでゴーギャンのために描いた絵なのだそうです。背景も主役のひまわりも黄色で、花瓶の一番膨らむ胴の部分と底の部分、テーブルのラインに青が使われていてそれがアクセントになっています。
(撮影できるのはこのパネルのみ)
【これから行かれる方へ】
・コインロッカーのために100円玉を用意しておこう
(小銭がないため、ショップで展覧会と関係のないグッズを買うミッションが発生しました。でも可愛いので満足!)
・コートやジャケットだけを預けるなら地下1階にクロークもある(11月現在)
・事前に入館時間が指定されたチケットを購入。予約した時間になってからしか建物に入れないので予約時間ちょうどに行くか10分くらい過ぎていくのが待たなくてちょうど良いかも。
・入る時間に指定があるだけで、出る時間はとくに何も言われませんでした。大きな絵が多いのでわりと見やすく、よほど熱心に見なければ1時間くらいで観られる量かと思います。
国立国際美術館
こんなふうな章立てでした。
Ⅰイタリア・ルネサンス絵画の収集
Ⅱオランダ絵画の黄金時代
Ⅲヴァンダイクとイギリス肖像画
Ⅳグランド・ツアー
Ⅴスペイン絵画の発見
Ⅵ風景画とピクチャレスク
Ⅶイギリスにおけるフランス近代美術受容
この後、地下2階のコレクション展『コレクション2 米・仏・独・英の現代美術を中心に』を観ました。展示作品リストの解説を読むと国別を基本にした現代美術の所蔵作品展は国内の美術館では過去にほとんど例がないそう。ナショナル・ギャラリー展とは違う国の作品や新しい時代の作品がたくさん観られるのでこちらもお勧めです。
布と一緒に絵が見られる!『藤田嗣治と彼が愛した布たち』福岡市美術館
藤田嗣治(1886-1968)の絵をご覧になったことがある方なら、布地の柄が細かく描かれていることに並々ならぬエネルギーを感じた方もおられるのではないでしょうか。
今回の展覧会は絵に描かれた染織品にスポットを当てて藤田の画業に迫る初の試みだそう。
一体絵でどのくらい柄を再現しているんだろう?と気になって行ってきました。
【福岡市美術館】2020年10月17日(土)〜12月13日(日)
『藤田嗣治と彼が愛した布たち』
会場内の撮影は不可なのでお見せできませんが、絵のすぐ近くに布が展示されていて 「ここの柄がここと同じだ~!」と目をキョロキョロさせて心の中で興奮していました。
布と同じ柄が正確に絵に描かれていることで藤田の人気が高まっていったそう。
写真のような正確さの絵なら藤田でなくとも他に居そうだけど、"藤田の場合は触覚を喚起させるような描写を追求した”(図録『藤田嗣治と彼が愛した布たち』)そう。
《アンナ・ド・ノアイユの肖像》では女性が着ているワンピースの袖とスカート部分にチュールが描かれています。女性は平面的に描かれているのに対してチュールの六角形の小さな網目が延々と続いていくのは目を引きます。近くで見てもごまかしがなく、細かに描かれている!
藤田が収集した布や製作した服や手作りの自分用と妻用のマスクが並んでいました。
当時の妻にあてた手紙に書かれた文字やささっと描かれたようなイラストなども展示されています。写真のサイズが今目にするものよりもとっても小さい(マッチ箱くらい?)のもので、お洒落をした藤田の姿が見られます。
今回珍しいのは藤田の戦争画も展示されていることでしょうか。
私は藤田の戦争画を2018年に東京都美術館で行われた回顧展で初めて見たのですが、等身大の人がそのまま入ってポーズをとっているような大きな絵がいくつもあり迫力がありました。カーキ色や茶色といった重々しい色のイメージの絵で、藤田と言えば乳白色の女性のイメージだったのでこういう絵も描いていたのだなと驚きました。
今回展示されている一枚の絵《神兵の救出到る》は荒々しいものではありません。
蘭領東インド(現インドネシア)を植民地として支配していたオランダ人の邸宅に一人の若い日本兵が足を踏み入れ、後ろ手に鎖で縛られて取り残されている女性を見つける場面を切り取った絵です。
今回の展示を最初から見て行けば戦争画にも藤田が以前描いた服が活かされているのが分かる絵でした。一枚の絵だからこそ解説も多めで、こちらもじっくり読めます。(図録の方はさらに細かく書いてあり、戦争画にしては不思議な絵だなと思われた方は読むといいかも)
福岡市美術館の公式ブログで作品の展示作業や展示風景が見られます。
裏話が好きな方にもおすすめです。
初体験、ZOOMでフランスにフジタ展の展示作業を中継! | 福岡市美術館
常設展の近現代美術室Aでは関連企画として「藤田嗣治と関わった画家たち」の展示が行われています。2020年12月27日まで。
九州派で知った菊畑茂久馬(きくはたもくま)の《春風 五》(2011年)の展示もあります。淡い緑のほわっとした色と四角い形が引き締めている絵で、近現代美術室Cにある《ルーレット》(1964年)という作品と同じ人が描いた作品とは思えない作品です。
そして近現代美術室の出口近くの大きな壁の所にはKYNE《Untitled》2020年
この作品は美術館の外からも見えます。こちらも2020年12月27日まで。
藤田の特別展が終わった後は12月24日から開催のヒグチユウコ展と少し重なります。
久留米市美術館 『没後35年 鴨居玲展 静止した刻』
とうとう明日までとなりました。鴨居玲展。
9月末に行ったもののなかなか書けなくて今になってしまいました。
約100点の作品と資料によって鴨居玲の全貌を紹介する展覧会です。
ちょうど有名な芸能人の自殺のニュースなどがあった時期で鴨居さんも自殺と聞いていたので自暴自棄になっているような怖い絵があったらどうしよう、などと初めて見る方の絵なので恐る恐る会場へ向かいました。そうしたらそんなことはなくて。
若いころから晩年の絶筆まで展示がしてあり、一人の画家とじっくり向き合える展覧会でした。人物が描かれていない背景の空間に切なさや不安が現れていて、大きな絵でも構図の決まり具合が半端ない人だな~と思いました。
特に会場の最後の部屋に展示されている『1982年 私』は180.0×257.8cmの大きなキャンバスに鴨居を含めて15人もの人物たちがそのまま入っているような絵で、まとまり具合に圧倒されます。そして画家の足元の愛犬を見つけてほっとしたり。
鴨居玲というと展覧会のポスターで見た赤い色のイメージが強かったのですが、青色の『教会』の絵もありました。
絶筆の自画像は荒々しくなく、きっと生きていたら別の日に続きを描くのではというそんな感じの絵でした。
【久留米市美術館】2020年9月12日(土)~2020年12月6日(日)『没後35年 鴨居玲展 静止した刻』
『ふくおかの名宝ー城と人とまちー』福岡市博物館で見つける宝物
11月29日までの展覧会に駆け込んで行って参りました。
到着後すぐ博物館のレストランで日替わりランチをもりもり食べて特別展と常設展へ。
特別展では『圧切長谷部』や『日光一文字』『銀箔押一の谷形兜』など黒田家ゆかりの銘品も展示。甲冑や兜がずらりと並ぶ展示風景は迫力がありました。
そんな中でも「おっ!」と思ったものをいくつかご紹介。
(撮影可能な物のみ撮影しております)。
「博多織」はよく目にするのですが、今回初めて「博多絞(はかたしぼり)」を見ました。
特別展を出た後は企画展示室でも気になるものを発見。
福岡市博物館の企画展示室は四室あり、そのうちの一室に展示されていました。
駅弁の上にかけてあるあの紙!掛け紙というんですね。
エキベンラッピングペーパー!なるほど~!
博多弁と福岡弁で「どうぞ早く食べてください」のセリフが分けて書いてあります。
博多弁と北九州弁とかではないのだなぁ。
ディスカバー・ジャパンもこの頃からだったとは。
そして駅弁つながりで、駅で購入できたお茶の入れ物「汽車土瓶」。
こちらは明治の頃にはじまったそう。
某漫画の設定は大正時代らしいので、大ヒット中の映画のあの列車にも汽車土瓶と駅弁を買って乗り込んでいた乗客がいたかもしれない。
昭和初期を代表する博多人形師、白水八郎(しろうずはちろう)の作品。
人形「熊野(ゆや)」
後ろ姿も綺麗で今にもスッと立ち上がりそう。
企画展示室でいつも大人気な日本号。螺鈿細工が美しい。
闘う時にはげたりしないのかは気になるところ。
そして気力を振り絞り、常設展へ。
金印発見のところでパネルに江戸時代の仙厓さんの名前が出てきたので驚きました。
発見者の名前を仙厓さんが掛け軸に書いていたそうで、同じ時代に居たのだなということが分かって嬉しかった。
常設展を観るとどうしても足を止めてしまうのがアジア太平洋博覧会、通称よかトピアが開催されている頃の模型。
シーサイドももちは博覧会開催以前に埋め立てられた地区で開催後に街が開発され、現在の博物館の周りにはデザイナーズマンションや高層ビル、住宅地などが立ち並んでいる。もともとは埋立地だったんだなぁ。
色んな物があるなかで自分の中に新しい発見が生まれるのが博物館の面白いところかも。
特別展のチケットで会期中に限り企画展示室、常設展示室が観られますよ。