ヨシトのたびかん

主に福岡。ときどき県外の美術館までの小さな旅や展覧会の感想など

福岡市美術館『ソシエテ・イルフは前進する 福岡の前衛写真と絵画』

戦前の福岡で結成された前衛美術グループ「ソシエテ・イルフ」。
一体どういうグループなんだろう?とチラシを見た時から気になっていて1月の上旬に行って参りました。

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特別展のヒグチユウコ展と向かいの、コレクション展示室の近現代美術室Bで2021年3月21日まで開催中で、観覧料は一般200円。こちらの料金で2階の近現代美術室A,B,Cと1階のコレクション展示室古美術が観られるのでとってもお得です。
そして特別展に比べると人が少ないのでソーシャルディスタンスを保ちながらゆっくり観られるのも良いところです。

1930年代半ばに集結し「古い」の逆さ読みから「ソシエテ・イルフ」を名乗るようになったメンバー達。彼らが影響を受けたロトチェンコやナジ・ラースロー、マン・レイの作品の部屋のあとにメンバー達の作品がありました。

私は上記だとマン・レイ以外の写真は見たことがなくて、展示室にはロトチェンコの写真が他の二人よりも多く展示されていたので、ロトチェンコびいきになりました。
ハシゴをのぼる人を下から撮るなど、いつもの風景をよくこんな構図で撮ろうと思ったな〜という写真が展示されています。

初めに海外の作品を見ることでメンバーたちが海外の作品を自分たちなりに取り入れていったんだなというのが分かる展示の流れになっていて、先ほどの記憶があるうちにメンバーの写真を見ることができるので写真に詳しくなくても「ムム、これは先ほどのと雰囲気が似ているな」と思えて観るのが楽しいです。

高橋渡、久野久、許斐儀一郎、田中善徳、吉崎一人、小池岩太郎、伊藤研之たちメンバーの写真や絵画の作品が展示されています。


図録を持っていないので記憶が曖昧ですが、昔の写真雑誌にイルフの元に招待された県外の写真界隈で権威のある方が書いた記事が展示されていて「九州弁」のような個性を期待していたが東京や大阪の真似だ、というようなことが書いてあって、その横の記事でイルフのメンバーはそれに関しては特に何も言ってなくて、○○さんは嵐のようにすぐ来てすぐ帰って行った、みたいなことを言っていてそれが雑誌に載っているって大丈夫なのと、ゆるさを感じてちょっと笑ってしまいました。前衛写真にも「地方」っぽさを求める視線があったのだな~というのも面白い発見でした。


観ていく中で好きだなと思ったのは吉崎一人の(ボートと階段を昇る人)
(パンフレットに()付きのタイトルなっているのは何か意味があるのでしょうか)

ボートと海に面した階段を昇る人の写真で、形の面白さが伝わってくる作品でした。
展示を見た中ではロトチェンコっぽさを一番感じました。

メンバー達も利用していた喫茶店ブラジレイロは福岡市博物館の常設展に内装が展示されているあれでは?と思って調べてみたら公式サイトには名前がなかったのですが、数軒のブログで名前を見かけるのでたぶんあってるかと。
博物館の改修工事が終わったら確かめに行ってみようと思います。

福岡最古の喫茶店ブラジレイロは移転先の呉服町で営業してるそうなのでこちらもコロナ渦が落ち着いたら行ってみたいところです。

ソシエテ・イルフは前進する 福岡の前衛写真と絵画 | 福岡市美術館
期間 2021年1月5日(火)~3月21日(日)

会場内撮影不可。ミュージアムショップで図録の販売あり。