ヨシトのたびかん

主に福岡。ときどき県外の美術館までの小さな旅や展覧会の感想など

思わぬ歴史が!『タータン 伝統と革新のデザイン』久留米市美術館

久留米市美術館で『タータン 伝統と革新のデザイン』展が始まりました。

(2019/11/4まで)

冬になるとよく見かけるタータンチェック。実は和製英語タータンチェック

という言葉は英語にはないんだそう。今回の展覧会、一番の衝撃!

 

会場にあったタータンの定義は

・二色以上の色を使い、それらの糸が直角に交わる格子柄

・たて糸とよこ糸に使う糸の色と数が同じで基本パターンが繰り返される

ものをタータンと呼ぶそう。

チェックはタータン以外の格子柄の模様を指すのだそうです。

 

 

今回のチラシはこんな感じ! 街中にもこのポスターが貼ってあるので目を引きます。

何という可愛さ! 直線なのになぜにこんなにほっこりしてしまうのか。

温かみのある色が冬を感じさせて、ウールやカシミヤなどの布地の手触りを

思い起こさせるからでしょうか。

 

タータン柄の缶バッチはミュージアムショップで購入できます。

 

今回はちょうど学芸員の方のお話を聞くイベントにも参加できました。

説明を受けながら1時間回って、一人でメモを取りながら回って1時間、

ミュージアムショップに15分くらい居ました。

 

 入館してすぐのスペース。タータンで覆われた柱がお出迎え。

 

入館してすぐの柱のスペースと、さいごの展示室の所にあるパネル状のタータンは撮影可能です。スコットランドのタータン登記所に登録されているタータン8131点のうち、今回100種類が展示されているそう。

 

 

タータンと一口に言っても色々な歴史がありまして、展覧会の流れをざっとまとめると

こんな感じでした。

 

タータンの歴史は口承文化で残っておらず、文献に現れるのは16世紀ごろ。 

スコットランドのそれぞれの集落で織られていた

ディストリクト(地域・地方)・タータン。 

 

17~18世紀、イングランドスコットランドの戦いの時にはスコットランドの部族が着ていたタータンはジャコバイトの反乱の象徴になり、1746年の反乱収束後にイングランド政府からハイランド衣装の着用やバグパイプゲール語がその後35年間禁止になります。

しかし、ハイランド連隊所属の軍人のみがタータンを着用することが許されます。

揃いのタータンの制服を身に着けることで仲間同士の目印になったからです。

戦地に赴く軍人によって世界に知られることになったミリタリー・タータン。

青と黒と緑の「黒い見張り番(ブラックウォッチ)」などは紳士ものの定番柄に。 

 

面白かったのは 氏族(クラン)タータンの話。

英国国王のジョージ4世が和解のためス1822年にスコットランドを公式訪問する際に、

国王を迎えるためそれぞれの氏族のタータンで迎えようということになり、

クランタータンが決まったそう。

昔から受け継いできたタータンがある氏族もあれば、ない氏族もいて、

そんな「ない」氏族向けに自社で作ったタータンの柄を売りつける会社もあったのだとか。

変なデザインではないのでそのままそれが氏族のタータンとして今にも

受け継がれているそうで、なんだか歴史の裏話が聞けて面白かったです。

 

企業が自社をイメージして作るコーポレート・タータン、

英国王室の許可なく着用できない門外不出のバルモラル・タータン。

タータンを使ったデザイナーの洋服や靴、アイビールックなども展示。

 

日本でのタータンの広まりを展示したコーナーも知らないことばかりで

興味深い話がたくさんありました。

1970年代にはタータンを着用したイギリスのアイドル、ベイ・シティ・ローラーズ

日本で流行し、ファンにタータンが広まる。

80年代には日本のアイドル、チェッカーズが人気になってタータンの認知度もUP!

 

学生服大手のトンボの話では(こちらのインタビュー記事参照)

1964の東京オリンピック以降、ブレザースタイルの制服も増え

詰襟、セーラー服から制服別注化が進みます。

1986年、東京の私立の喜悦学園が紺のブレザーとタータンのスカート制服を採用したところ入学希望者が増え、それが全国各地に広まったのだとか。

たしかに高校受験の時、私立の制服の可愛さに「入学したいな」と思いましたもんね。

 

 

タータンが身近に感じられる、色んな歴史が分かる展覧会でした。

これから冬物のタータン製品を購入する前に展覧会で気分を盛り上げておくのも

良いかもしれません。

 

 

 ~おまけ~

ミュージアムショップでこちらの本をうんうん悩みながら買ってしまいました。

決め手はたくさんの写真。いつかタータン巡りをしにスコットランド

行きたくなったら活躍しそうです。

スコットランド タータンチェック紀行 (私のとっておき)』