ヨシトのたびかん

主に福岡。ときどき県外の美術館までの小さな旅や展覧会の感想など

岐阜県現代陶芸美術館の『ルート・ブリュック 蝶の軌跡』展へ

可愛いけれど、ちょっと不思議。
昨年初めてルート・ブリュックというフィンランドを代表するアーティストのことを知りました。《ライオンに化けたロバ》の写真を見たことがある方も多いかもしれません。

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しかし、新型コロナウィルスの感染症拡大防止の観点から福岡での展覧会が中止になってしまいました。

岐阜県現代陶芸美術館での展覧会は開幕が遅れたものの(2020年4月25日が6月6日)会期は延長となり(2020年7月5日が8月16日まで)展覧会が観られる機会が延びたのは本当に良かったなぁと思います。

そして8月、キラキラとした釉薬と物語を感じる面白い形をどうしても観たくて3密を避けつつ岐阜県へ行って参りました。(マスク、除菌シート、日傘に日焼け止め、サングラス、汗拭きシートも忘れずに)

スーツ姿のサラリーマンに混じって福岡空港から中部国際空港、名鉄、JRを乗り継いで1時間15分ほどでJR多治見駅へ到着。空港はガラガラで、通勤時間帯が終わった電車は空いていました。
多治見駅からはバスで15分、バス停から徒歩でひたすら坂道を登って10分、敷地内の林を抜けたところにようやく美術館があります。地元の人はおおむね車で行くようです。建築家は磯崎新氏。駅からバス、バス停から坂道を上って行く美術館という点は北九州市立美術館と一緒のため親しみを感じます。

ブリュック展は電話での事前予約制で、行きたい日と時間、名前、連絡先などを告げて、予約をして行きます。展覧会の入り口で予約していたことを告げ、検温のち、チケットを購入して入場しました。

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 建築科に合格したものの、二人の兄から「建築家は激務だ」と言われ仕方なく進路変更したブリュックは美術工芸中央学校に入学し、グラフィック・アートを学びます。卒業後はグラフィック・アーティストとして働き始めます。

ブリュックのデザインした作品が周囲に認められて来たころ、フィンランドのアラビア製陶所から「訓練生として入社しないか」とスカウトされ、作陶は素人だったもののアラビア製陶所へ。世界的に有名なフィンランドのセラミック・アーティストたちがブリュックの同僚になります。中でもビルゲル・カイピアイネンはブリュックの親友になったそう。初期の方の作品ではカイピアイネンから教わった技法でブリュックが作った作品なども並びます。

アラビア製陶の技師チームはブリュックのために新たな道具や素材を開発し、釉薬の調合の研究なども行っており、釉薬の色の見本も展示されていました。現代のアーティストがこの環境のことを聞いたら「羨ましい~!」という声が上がりそうです。
 

1958年《都市》パーツを組み替えて色んな都市が再現できる作品。

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1969年《色づいた太陽》

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《心のモザイク ―― ルート・ブリュック、旅のかけら》

ブリュックの長女、現代アーティストのマーリア・ヴィルカラさんがブリュックの残したタイルを並べた作品。2016年に制作された《心のモザイク》の日本バージョン。(図録を見るとこの長さの倍くらいはありそう)ブリュックが作った作品の年代ごとの移り変わりも分かります。後半、モノクロになっていくのにグレーや白の表情が豊かでずっと見ていられそうです。

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可愛いものに惹かれて行ったら、可愛いものだけでなく抽象的だけど物語を感じる作品に出会うことができた展覧会でした。


会場内は写真撮影可能な作品も多いのでスマホやカメラがあると良いです。長く居ると肌寒く感じるかもしれないので羽織りものもあると良いかと。

ブリュック展の横の展示室では親友カイピアイネンの作品(あ!この柄雑貨屋さんで見た事ある!という柄)や北欧の陶芸や所蔵品の展示もあるので、こちらも見て損はありません。  

 

余談ですが、ルート・ブリュック展の会場の終わりのほうで流れている当時の会社案内(製陶所?)の映像がありまして。
整えられた髪にお化粧した顔で白衣を着て作業をする姿は案内用なのだろうなぁと思うのですが、作品を作っている女性の横で手が空いた女性がタバコを吸いながら眺めていて「自由だな〜!」と思いました。
字幕がないのと図録にも説明がないので冗談なのか本当なのか分からないのですが、映像として見せてしまう所に会社の遊び心を感じました。指輪をした女性も作品を作っていて、それが特別ではなく普通という感じで映っているのも良かったのでした。

  

展覧会の公式サイトがこっているので覗いてみるのもお勧めです。

 

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