ヨシトのたびかん

主に福岡。ときどき県外の美術館までの小さな旅や展覧会の感想など

博多座のヴォイサリオンに行ってきました。

9月2日、千秋楽の『ヴォイサリオンⅢ 博多座声歌舞伎 信長の犬』を観てきました。博多座の会場内は女性が多め。20代くらいの方も見かけましたが30代40代くらいの層が多いように感じました。

地方での大きな舞台の朗読劇。
しかも私のようにたいして声優さんに詳しくない者でも知っている声優さんのキャスティングとなれば行くしかない。何とか取れたチケットは3階席で、声が届くかハラハラしながら会場へ向かいました。

【物語のあらすじ】
本能寺の変で信長が死んでから数か月後、武蔵の国で巨大な白い犬が保護される。犬好きの田舎大名である太田資正は喜んでこれを飼った……。
それが信長の犬とも知らずに……
サイトより引用)

 

「信長の犬」の噂を聞きつけた秀吉が資正を訪ねてやってくる、というところから物語が始まります。話が進むにつれて明かされていく信長と秀吉、信長と白いボルゾイ犬の過去。そして現在の資正や家臣とボルゾイ犬のやりとり。
信長が犬を思う場面でも目頭が熱くなり、犬が人を思って駆けていくときにも涙がでます。

声が届くか心配だった3階席でしたが、声も音楽もばっちり。双眼鏡で見ると舞台に居る声優さんや演奏家の方たちの表情も見られて満足でした。豪華な舞台の上で着飾った声優さんのアフレコ場面に遭遇しているような気分です。
可笑しいときに思わず笑顔になっちゃうんだ、とか辛い話をするときは苦しそうな表情をするんだなとか。身振り手振りの大きな動きはないけれど、声優の方が今ここで声を発しているんだな、一緒の空間に居るんだなというのが確かに伝わってきて何とも贅沢でした。 

朗読劇は小説に似ていて、声優さんの言葉で主人公たちが今どんな表情をしているか、どんな場所にいるのかを頭の中で思い浮かべることが出来ます。さらに舞台のセットや音楽の生演奏、お能の舞や火花の演出などが頭の中でのイメージ化を助けてくれます。舞台を見ているようで、頭の中のイメージがその上に重ねあわされていくような、二重の世界を同時に見ているような体験でした。

普段こういったイベントは東京、大阪あたりで行なわれますが、首都圏の会場不足で博多座が「うちでやりませんか」と名乗りを上げて公演が決まったのだとか。(ありがとう博多座!)

地方で公演を行って、それを映画館やネットでライブビューイング、後日DVD化で採算が取れればまた地方でもやってくださるかな。会場不足問題が解決したらまた来なくなっちゃうのかな。お上りも楽しいけど、地元で開催されたらまた行きたいので、どうぞまた来てください~!

 

~声優さんごとの見どころという名のおまけ(マイ公演メモより)

*以下、結末には触れていませんが前半のラストと劇の内容に触れています。ご注意ください*

 

諏訪部さんが犬の役ときいて全編犬語で喋るのかしらと思っていたら日本語で、犬の考えていることが分かるのが信長様と犬大名こと資正でした。
信長様と過ごした青年期、資正と過ごした壮年期、最後の老年期と年代に応じた声を使い分けてらっしゃいました。私が好きなのは資正期の低いニヒルな声。

信長役は朴璐美さんで、声も出で立ちもとてもカッコ良かった。何処までもついて行きたくなる信長様でした。前半のラストは本能寺の変の焼き討ちにあう場面。後半に行く前の休憩時間に廊下で会った友人と「信長様!!」「宝塚だ!」と盛り上がってたら開幕5分前で、博多座名物きんつばを食べる暇もなく席に戻りました。

石田彰さん演じる多門は切れ者の軍師。浪川さん演じる資正の乳兄弟で、犬バカと呆れながらも命を大事にする資正の姿勢は認めていて太田家を支えている。犬に噛まれたことがあり犬嫌い。しっかり者で主君である資正にもビシバシ言うタイプ。おっとりした資正とは良いコンビで二人の掛け合いも見どころでした。

掛け合いと言えば、井上和彦さん演じる老犬瑠璃丸と資正のじゃれ合うシーンをクールに見つめるボルゾイ犬のシロ(諏訪部さん)も面白かった。仰向けになってお腹を見せる瑠璃丸を資正が撫でるのですが、その時の資正のデレデレ声と瑠璃丸の全力の嬉しそうな演技が会場を笑わせていました。

井上さんは千利休も演じられていて、ワンコ先生の名前をほしいままにする瑠璃丸のコミカルな演技とは別の声で演技されてました。利休が信長様は月で、秀吉さんは太陽だという言葉が後半じわじわと効いてきました。 

鈴村健一さん演じる秀吉はとても人間臭い。信長という月に魅せられて、届かぬものを永遠に追いかける人。ボルゾイ犬は彼の手に渡ってしまうのかは見てのお楽しみです。秀吉は衣装がとても豪華で眩しかった。鈴村さん、うた☆プリの聖川様だけでなくおそ松さんのイヤミも演じてらっしゃる!

保志総一郎さんはクールで真面目な明智光秀とちょっと不気味な風魔小太郎。こちらも全然声が違う。保志さんのお名前をよく目にするけど自分が知っている作品ではお目にかからないな・・・と思っていたらペルソナ5の明智くんだった…!

出演作の予習はしていくと2倍3倍楽しめそうだな~と思いました。