ヨシトのたびかん

主に福岡。ときどき県外の美術館までの小さな旅や展覧会の感想など

エッチなものを観るには大義名分が必要なのだ。~京都国際写真祭「ピエール・セルネ&春画」展~

この閑古鳥ブログを見に来て下さっている心優しき皆さんへ質問です。

春画ってご存知ですか?

アダルトビデオやエッチな漫画などはご覧になりますか?

わりと見る?

ふふふ、私もそちらの方は少々嗜んでおります。

 

春画も浮世絵ではあるのですが、

直接的な性描写がある浮世絵が春画と呼ばれています。

この描写を今の漫画で再現するとモザイクで修正がかかること間違いなし。

そんな猥褻な物を美術館で展示するなんて!

ということで過去に浮世絵の展示は多々あれど、

春画の展示を行う美術館は最近までありませんでした。

 

2013年イギリス、大英博物館での春画展、

2015年に東京の永青文庫での春画展が開催され、

それまで本やネットでしか見ることが出来なかった春画が

入場料を払えば一般人でも本物が見られる時代になりました。

そんな流れのなか行われたのが、

銀座のシャネル・ネクサス・ホールでの「ピエール・セルネ&春画」

(2019.3.13~4.07)の展示です。

 

そして今回の京都国際写真祭のセルネ&春画の展示の提供もやはりシャネル。

江戸から明治に変わり、西欧のキリスト教を母胎とする倫理観を取り入れた日本。

キリスト教を母胎とする価値観は性に対するタブー意識があり、

それにそぐわない日本の文化は恥ずべきものになったと聞きます。

 

国外で価値が認められたら日本で流行りだす現象みたいだなぁと

思わなくはないのですが明治以降の価値観を当たり前のものとしている

現代日本では、価値観の逆輸入が必要なのかもしれません。

 

それに有名なブランドのシャネルが推しているのだから春画もお洒落に違いない!

というメッセージが読み取れなくもない。

恥ずかしいと思っているものを見るには大義名分が必要なのだ。

シャネルが推しているのだから見てみようという人もいるはずで、

そういう方たちの後押しをしようとシャネルが自分のブランド力を

使うのって意義があることだよなぁなんて思ったりしました。

 

さて、前置きが長くなりましたがそんな大義名分を胸に抱きつつ、

いざ京都へ向かいます。

 

場所は烏丸御池駅から5分程度歩いた誉田屋源兵衛竹院の間

(こんだやげんべい ちくいんのま)。京都の町家が会場です。

 

誉田屋源兵衛は創業280年の帯の製造販売の老舗で、

ふだん1、2階には帯が飾られています。

今回は1階にセルネの作品と春画、

2階の黒壁のスペースに帯の展示がされていました。

 

2階の小部屋には洋服なども販売されていて

マダムたちはこういうところでお買い物をするのだろうか、

と想像が膨らみました。

 

入り口から入って短い廊下、右手に続く部屋に春画。

そして隣の部屋にセルネの作品。

そして春画、セルネといった感じで建物をそのまま活かした展示となっていました。

 

セルネの作品はタイトルが一人の人名、

もしくは○○&☆☆という二人の名前になっています。

個人またはカップルのヌードを被写体として

白と黒のモノクロで抽象画のように表現された作品が並びます。

スクリーンの背後にいる人物のシルエットを撮ったのだとか。

 

春画の説明文を読んでフフフとなるのと似ていて、

セルネの写真を見ていると身体のラインがどの部分なのか、

これはどういう動きをしているんだろうかと考えて

「はっ!」と気づいた時にフフフと笑いたくなります。

 

展示されている浮世絵師の名前を全部覚えてはいないのですが、

鈴木春信、磯田湖龍斎、鳥文斎栄之、喜多川歌麿、

葛飾北斎、歌川国芳のような並びで年代順に並んでいたかと。

 

思い出せる限りでシチュエーションを列挙してみると、

・海女とタコ

・最中に喜ぶ女性と冷静な目で見る男性

・乗り気ではない女性のものを舐める男性

・こたつでムラムラしてしまいこたつ布団ごと女性に覆いかぶさる男性

・若い男の子が我慢できなくて若い女の子と縁側に面した部屋でするもの

・着物が藍色ばかりの本

・醜い男に無理やり(女性の顔も嫌そう!)

・逢見八景(近江八景という名勝地のパロディ)

・猫や犬が情事の最中の画面にいるもの

・オランダ人(?)と遊女

・ろうそくの光で女性の陰部を照らし、名器の秘密を探ろうとするもの

・女性同士で張形を使ってするもの

・媚薬などを使ってするもの

・男性3人、女性2人でしているもの

・庭で用をたそうとしてしゃがむ女性に隣の家の生け垣の隙間から

 自分のものを出して事に及ぼうとする男性。

 しかし女性の夫にそれを握られてしまう、などなど。

 

色々ツッコミどころ満載で笑ってしまうものも多く、

スタッフさんの視線を感じながら解説文を読んでいると

照れくささもだんだんと薄れてはくるものでだいぶ長居してしまいました。

 

古美術商の浦上蒼穹堂代表、浦上満氏の個人コレクションを見ると、

春画ってこんなにもいろんなシチュエーションがあるのだなぁ

と思えるんじゃないでしょうか。

 

春画ってよく知らないけど一回見てみるかと思ったら行くのもありかもしれません。

 

誉田屋源兵衛 竹院の間(こんだやげんべい ちくいんのま)

会期 2019.4.13~2019.5.12

10:00~18:00 水曜休館(5/1日以外)

入場無料 (18歳未満入場不可)

 

www.kyotographie.jp

 

 

www.kyotographie.jp