ヨシトのたびかん

主に福岡。ときどき県外の美術館までの小さな旅や展覧会の感想など

久留米市美術館「デビュー50周年記念 萩尾望都 ポーの一族展」へ

最近ようやくポーの一族シリーズを全部読み終えて、会期終了間近の久留米市美術館「デビュー50周年記念 萩尾望都 ポーの一族展」へ行ってきました。

現在、ポーの一族のシリーズの漫画は1970年代に発行された『ポーの一族』1~5巻と2016年から始まった続編『ポーの一族 春の夢』『ポーの一族 ユニコーン』『ポーの一族 秘密の花園1』が発行されています。

あらすじは、元々は人間だったエドガーとアランがバンパネラ(吸血鬼)となり、時代や場所を変えて様々な人と関わりながら生きていくお話です。人間の登場人物たちは歳を取るけれど、エドガーやアランは歳を取らずにずっと子供の姿で生きていきます。
「ずっと同じ姿だから人から怪しまれないように長く同じ所に定住せず生きていく」という設定が面白く、物語を動かしていく設定で新鮮に感じました。

会場内の萩尾さんへのインタビューによると、最初から連載物として描かれていたわけではなく、同じキャラクターが出てくる短編を3作描いていたらさすがに編集者さんに気が付かれて、そんなに描きたかったら描いたらという流れで連載が始まったようです。
なので初めて1巻を読んだ私はムムム?同じ名前だけど微妙に違うぞ何でだろ?と思ったのでした。連載が決まったからか巻数を重ねるにつれて読みやすくなり、2016年から始まる続編では絵柄が少し変わるものの物語の核心部に迫るドキドキの展開が描かれています。

会場内には主に『ポーの一族』の漫画の原画やカラーイラストの原画、宝塚の公演で使われた衣装の展示、終わりの方にはポーの一族以外の萩尾作品の展示もありました。
私を含め来場者の方は漫画の中のセリフを読むので進みがゆっくりなので、人が居ない原画の前を見つけては移動し、また戻ってさっき読めなかったところを読むという風に鑑賞しました。

 

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展示ざれている小さな予告カットを見ていると、たいてい「返却希望」と鉛筆で添えられていて、書いてないと返ってこなかったのだろうなぁと思いました。
カットの横にあらすじも鉛筆で手書きされていて、これも先生が考えるのだなぁ、編集者さんじゃないのだなぁ、と小さい驚きがありました。

萩尾さんへのインタビュー映像でイメージと筋肉の話をされていて、頭の中のイメージが変わると描く絵も変わるし、筋力が衰えると絵も変わると仰ってたのが印象的でした。
40年ぶりに同じキャラクターを描くと同じにはならないですよね。それでもエドガーらしさを描けるところが漫画の良さというか、物語の良さなのかもしれません。変わってはいるけど、変わらない彼を感じるというか。歳を取る私、変わらない彼。私、いまリアルにポーの一族を感じているんじゃないでしょうか。

インタビュー映像で流れる作業場で、手慣れた手つきでパソコンで紳士靴の画像を角度を変えながら眺めている先生もちらりと映っていて、まだまだ進化しようとしている!と思いました。

70年代のポーの一族掲載号の雑誌の表紙や漫画雑誌の展示もあり。 文通相手募集の氏名や住所が漫画の横に載っていて時代を感じました。(私が子供の頃も文通相手募集のコーナーがありましたけども、ホホホ)
昔は好きなものについて語り合おうにもブログもツイッターもなかったから「きっとこの号のここが好き!」とかを手紙で送りあっていたんだろうなぁ。

 

鬼滅の刃』を読んだあと『ポーの一族』を読むと、「この設定、鬼滅で見たことある!」という場面を発見できて楽しいです。一族の直系の濃い血、血で仲間を増やす、血を受け入れられずに亡くなる者もいる、ずっと眠っている間は飢えないなど。
エドガーとメリーベルが兄と妹なのも炭治郎と禰豆子っぽいなぁと思いました。
萩尾さんは大牟田出身、吾峠先生も福岡出身と聞くので何か参考にされているんでしょうか。

 

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漫画に出てくるバラ、クリムゾン・グローリーも咲いていました。

2021年6月13日(日)まで!

デビュー50周年記念 萩尾望都 ポーの一族展 | 久留米市美術館 | 石橋文化センター