ヨシトのたびかん

主に福岡。ときどき県外の美術館までの小さな旅や展覧会の感想など

目からウロコのクレパス展(会期終了)

 

クレパスというのは、クレヨンの商品名なのだとばかり思っていた。

 
大正初期、小学校の低学年の図画工作の時間に色鉛筆を使っていたが、
粗悪な物が多くバキバキ折れていたらしい。
折れた色鉛筆を削るために先生が児童に指導出来ないということもあったのだとか。
 
そこで私立の小学校が外国で使われているクレヨンを輸入して使い始め、
日本でも需要があるだろうということでサクラクレパスの前身である

日本クレイヨン商会(桜クレイヨン商会に改名)が日本でのクレヨン作りを始める。
 
そしてクレヨンが出回り始め、もっと良い描画材料をということで
クレパス作りが始まる。
 
硬くて線描向きのクレヨンと柔らかくて混色のできるパステル。


クレヨンのように後処理の手間が無く(パステルは定着液が必要)
油絵具のようにべっとり塗れて画面が盛り上がる、

そんな描画材料を開発したのがサクラクレパスなのだ。
 
当時はまだ、使っている椰子油や硬化油が寒暖の影響を受けやすく、

また四季を通じて一定の硬度を保つことが難しかったため、

初期のクレパスは夏用と冬用があった。

二種類揃えるのは費用がかさむ、使いづらいということで研究を重ね、

昭和三年(1928)に通年タイプのクレパスが登場する。
クレパスは小学校や文具店に卸され、どんどん広まっていった。
 
 
 展覧会の会場にあった作品のコメントで
「子供が使う物と思っていたが、大人が使うのにも充分足りる。面白い」
と言うようなことを言っている画家が多かった。
 
昔から子供の物というイメージが強かったらしい。
私も小学校の低学年の時に使っていたくらいだから画家のコメントに深く頷く。
 
実際にクレパスを使った絵がずらりと並ぶ風景を見ると
画家たちが褒めるのもよく分かる。
 
 
風景画、人物画、抽象画。動物に食べ物。色々なテーマで描かれた作品が並ぶ。
油絵具があまり手に入らない時代に代用品としても使われたクレパスなので、
油絵のような塗り重ねた雰囲気の絵もたくさんある。
 
 
クレパスを下書きに使い、上から油絵具を使って絵を描く画家もいて、
きっとそちらの使い方をする画家の方が多いだろうから、こんなに
クレパスが前面に出ている絵の展覧会を観るのは面白かった。

700色のクレパスセットや色彩紀行という旅をテーマにした6色のクレパスセット

などを見ていたら、ワクワクして何か描きたくなってきた。

大人にもクレパス。身近な物を身近な画材で描けると面白そうだ。

 

巨匠たちのクレパス画展 | 東郷青児記念 損保ジャパン日本興亜美術館

 

 

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 おまけ。

大阪のサクラクレパスの本社でもクレパス画を見ることができます。

クレパスでこんなに描けるのか~!と驚きたい人はコチラ。

サクラアートミュージアム | 株式会社サクラクレパス

 

参考。(たぶんこちらの記事が展覧会でも使われていたかと)

サクラクレパス ニッポン・ロングセラー考 - COMZINE by nttコムウェア

 

左のビルの42階が東郷青児記念 損保ジャパン日本興亜美術館。

窓から新宿が一望できます。