ヨシトのたびかん

主に福岡。ときどき県外の美術館までの小さな旅や展覧会の感想など

箱根 乗り物と人

 

 バスの旅

旅先でのバスは楽しい。

電車よりも周りの景色が楽しめるし、地元の方が乗っていれば方言も聞ける。

あとは安全に目的地に着けば満足だ。

だけど今回のバスは違った。箱根美術館から箱根ラリック美術館までの、時間にしたら15分から20分くらいのバスの旅。

 

「ポーラ美術館に行かれますか?」

 

乗る時に尋ねられたのは美術館が今は閉館しているから、それを事前に知らせてくれようとしたのだろう。

ラリック美術館です、と答えて一番前の左側の席に座る。

目の前の景色と運転士さんの動きが見られる楽しい席だ。

 

観光施設を巡るバスなので、道の途中の観光案内や

目的地に着くたびに施設の紹介や入口の場所なども知らせてくれる

 

箱根は山道なのでカーブが多く「酔いやすい方はいらっしゃいますか?」と手を挙げる仕草をして「酔いやすい方がいる時は速度を落として走行します」の言葉通り、

速度を落として運転していた。

 

バス停に人がいたら「どこに行かれますか?」と必ず声をかける。

外国の方ならば「次のバスです」と英語で答えつつ、

腕でバスの系統を示すTの字を作って案内もする。

 

わたしがラリック美術館で降りると「帰りのバス停は五十メートル先にあります」と教えて下さって、観覧し終えてバスを待っていたらまた同じ運転士さんで

お帰りなさい」と声をかけてくれたのが良かった。

 

帰宅途中の地元の中学生に運転士がピッと手を上げて挨拶すると

の子もニコッと笑っていたのでいつものやりとりなのかもしれない。

 

箱根ロープウェイ

大涌谷で温泉卵を買った家族と一つのゴンドラに乗ることになった。

わたしはゴンドラの前方。3人家族は後方で温泉卵を食べている。

静岡にいる大学生の息子と新潟から出てきた両親が一緒に旅行をしているらしい。

夜の間によくこれだけ積もったなぁと思っていたら、

新潟の母は「降ってもこのくらいなのね」

と可愛いものをみるかのように笑っていた。

 

 

 

芦ノ湖遊覧船と駒ケ岳ロープウェイ

 

昨日の雪は陽射しを浴びて雨のようにしとしとと、所々でボトボトと落ち始めていた。 

芦ノ湖に降り立つと、湖を囲む山に遮られて富士山が見えなくなるのが驚きだった。

写真で見ると湖と富士山が一緒に写っていたりするから、湖面に近いところからでも見られるものだと勘違いしていたのだ。写真はたぶん、湖の南側にある高台から撮られたものだろう。

ロープウェイの桃源台駅から十分ほど歩くと芦ノ湖遊覧船の湖尻港に着いた。

 

アメリカからの団体のお客さんと一緒にフェリーに乗り込む。

『ここには誰か座ってる?』と英語で聞かれたので『いいえ』と答えると、

横の席に老夫婦が腰掛けた。進行方向が見渡せる一番前の特等席だ。

 

出航まで何もすることがないので、何か会話せねば、写真でも見せようかと思ったが、簡単な英語もとっさに出てこなくて、景色を見ていた夫人の『ビューティフル』という言葉にコクンと相づちを打った。

 

アナウンスは日本語の後に英語で案内があり、屋上デッキに出ます、

と指で天井を指すと夫人がニコリと笑って見送ってくれた。

 

 

フェリーを降り、五分ほど歩くと駒ケ岳ロープウェイの乗り場に着く。

先ほどのアメリカからの観光客と共にすし詰め状態のゴンドラで山頂に運ばれる。

案内係の女性の日本語は観光客の声にかき消され、何を言っているか分からない。

 

外国語のアナウンスがあったら、もう少し静かに聴いていたかもしれないが、

日本語だけならお喋りもしたくなるだろう。

山頂にはまだ雪が残っていた。眼下の風景は雲に覆われ、雲の切れ目に時折富士山が見える。

 

ぬかるむ丘を登った先に神社があり、

引き戸を開けると中には神主さんがいた。

お参りをしたあと、丘の端から雲に覆われた富士山を見る。

 

 

 

ロープウェイで麓に降りた後は箱根園から箱根湯本までバスに乗った。

こちらのバスは昨日のバスと違って外観も中運転士さんもごく普通のバスだ。

主に乗っていたのは観光客だが特に観光案内などはなかった。地元の人の足なのかもしれない。

 

湯本に着いて駅の近くの土産物屋をブラブラして、パンを買って帰途に着いた。